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2020-4h (一般記事) 論文発表をめざす生徒理科研究法 第4章 実験・調査の実施と中間報告書の作成法

Seitonorika 2020-42020年5月24日掲載,ダウンロードPdf

生徒の理科研究所
〒623-0342 京都府綾部市金河内町奥地22番地, https://seitonorika.jp,  uketuka@seitonorika.jp

目次: 1.実験・調査の安全な実施、2.研究倫理の遵守、3.実験ノートをつける、4.実験・調査手順の確認と技術の習熟、5.実験・調査計画(方法)の再検討と変更、6.薬品・機器の購入と研究経費、7.高価な分析機器や実験装置がない時の対策、8.中間報告書の作成、9.中間報告会。
類別: 一般記事  分野: 生徒理科研究法  キーワード: 安全、研究倫理、実験ノート、中間報告

1.実験・調査の安全な実施

実験・調査を安全に行うこと、事故を起こさないこと、適切な廃液処理は、研究を進めるうえでも社会的責任をはたすためにも重要です。実験・調査の開始前に、どこに事故の可能性(リスク)があるのかを把握し、どのようにして事故を避けるのか、もし事故が起こった場合にどのように対処するのかを知って、必要な備えをしておく必要があります。まず、指導教師が把握しておくことが必要です。同時に、実験を行う生徒自身が知っておく必要があります。

以下の書籍を紹介します。

①理科の実験安全マニュアル 左巻健男・山本明利・石島秋彦・西潟千明 東京図書
②第7版 実験を安全に行うために 化学同人編集部 化学同人
③新版 続実験を安全に行うために 化学同人編集部 化学同人

この他に、多くの大学が独自の「安全マニュアル」を作成し、実験研究の安全確保と社会責任を果たすことに取り組んでいます。いくつかの大学がweb上に公開しているので、これも参考になります。

実験・調査を開始する前に、リスクと対処法を必ず全員で確認するようにします。

2.研究倫理の遵守

「研究」が社会的に研究として認められるためには、研究倫理に従うことが不可欠です。研究倫理に反する「研究」は成果を研究発表会で発表することも論文として発表・出版することもできません。以下の条件を満たす必要があります。

①研究倫理、「科学の健全な発展のために―誠実な科学者の心得―」(*1)を遵守していること。また、「中等教育における研究倫理:基礎編」(*2)を参考にしてください。

*1 日本学術振興会
https://www.jsps.go.jp/j-kousei/rinri.html 研究公正ページ参照
*2(一財)公正研究推進協会
https://www.aprin.or.jp/e-learning/rse/rse_p0 参照。ただし、「中等教育における研究倫理:基礎編」は、引用必須文献に関する考え方が「論文発表をめざす生徒理科研究法 第2章 研究には新規性が必要である」とは異なるので注意が必要です。

②遺伝子組み換え実験、動物実験、あるいは人を対象とする研究を含む場合は、遺伝子伝子組換え生物等規制法(*3)、動物実験等の実施に関するガイドライン(*4)、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(*5)、個人情報保護法(*6)を遵守していること。なお、これら指針による研究計画の申請、あるいは、実施許可の取得は研究実施前に行う必要があります。指導教師が申請します。

*3文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室「高等学校などで遺伝子組み換え実験を行う皆様へ」https://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/9_12.pdf
*4 日本学術会議「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-k16-2.pdf
*5 文部科学省ライフサイエンスの広場 人を対象とする医学系研究https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/ekigaku.html
*6 個人情報保護委員会法令・ガイドライン等https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/

③著者または著者の所属組織が営利企業等から援助・便宜を受けた場合(利益相反)、そのことによって研究の客観性・公正性がゆがめられないこと。

④発表論文には、第3者の権利を不当に侵害する、または、財産に不当に損害をあたえる情報、または、その可能性がある情報を含まない。また、生徒理科研究論文としての発表・出版にはふさわしくない内容を含まないこと。

3.実験ノートをつける

実験・調査を行うときに重要なのが実験ノートの作成です。A4版あるいはB5版の大学ノートを準備し、実験・調査手順の確認、実験・調査操作のチェック、実験・調査結果の記録に用います。「実験ノート」専用のノートも市販されています。

実験・調査を行うときは、実験・調査を行う前に、日時を書き、実験・調査方法書(プロトコール)にもとづいてその日に行う細かな操作手順を簡潔に実験ノートに書き写します。これにより、実験・調査手順を確認します。実験・調査を開始すると、それぞれの手順を行うと同時に、書き写した手順上に確認のチェックを入れます。手順どおりにできなかった場合には、そのことをメモします。最後に、実験・調査結果を文字、写真、模式図、グラフなどにより記入します。最後に実験・調査中に気付いたこと、結果から分かることなどを書きます。

この実験ノートを用いた確認と記録は複雑な実験操作についてだけでなく、薬品の調合などの簡単な手順についても同様に行います。また、毎日の動物への給餌、植物への水やりや観察なども必ず記録します。これにより、研究中に行うすべての実験・調査行為を記録します。

さらに、個人で実験・調査ノートを作成する場合には、実験・調査だけでなく、研究計画の作成、関連論文の内容、実験・調査結果の考察、思い浮かんだアイディアなど研究活動にかかわるすべてのことを1冊のノートに記録すると効果的です。情報は分散すればするほど希薄になり、良いアイディアが浮かばなくなるからです。

個人で実験・調査を行うときだけでなく、複数の人数で分担しながら1つの実験・調査を行うときにも、共通のノート(または個人ノート)をつくり実験・調査の確認と記録を行い、情報共有します。

 4.実験・調査手順の確認と技術の習熟

生徒理科研究における実験・調査は授業中の実験・調査とは異なり、実験手順書(プロトコール)の内容を自分で検討しながら実験をすすめる必要があります。授業中の実験・調査は、指示された手順どおりに操作すれば必ず結果が得られることが、教師や教科書会社によりあらかじめ確かめられています。しかし、新規性をめざす研究の場合は、自分の研究対象・現象に実験手順書がそのままで有効か否かは明らかではありません。また、手順書が大学の専門研究室用に作られており、研究環境の異なる高校現場に合わないこともあります。

図4 研究計画の見直し 実験・調査初期には操作手順の確認と結果に基づいた問いと実験調査計画(方法)の見直しが必要である。

実験・調査方法が自分にとって始めての場合には、最初に実験・調査手順の確認が必要です。実験手順書にもとづき、実験場所、実験機器、薬品、実験環境等を準備します。そして、各操作手順を1つ1つ丁寧に確認しながら実験を進めます。この時、手順書に自分の状況に合わない部分があれば、書き足したり書き換えたりして自分の状況にあったものにします。

操作方法の複雑な分析機器、実験設備を用いるときも同様です。まず、操作マニュアルを読んだり、指導教師または専門家から操作方法の講習を受けたりして、装置の原理、操作手順、操作上の注意事項を理解します。さらに、実際の実験・調査の前に何回か自分で機器を動かして操作方法を習得します。そして、自分専用の操作手順書を作り上げます。

動物飼育、植物栽培の必要な実験・調査の場合には、まず、良好に飼育・栽培できる技術の習得が重要です。そして、自分の状況にあった飼育・栽培手順を確立し、手順書を作り上げます。また、飼育・栽培中にチェックすべき点も明らかにします。

授業中の実験とは異なり、この準備段階に得られる実験結果はデータには含めません。この段階は、あくまでも手順書(プロトコール)の確認・確定と実験操作の習熟を目的とする予備実験です。

5.実験・調査計画(方法)の再検討と変更

実験対象・現象や実験装置が実験手順書の前提としているものと異なる場合、いくら実験手順書どおりに正しく操作を行っても結果が出ない、あるいは、結果が出る段階まで到達できないことがあります。たとえば生物的操作であれば対象生物が死んでしまったり、化学的操作であれば夾雑物が混入していたり、途中でサンプルがなくなったり、物理的操作であれば計測範囲を超えてしまったり、検出感度以下となってしまったり、ノイズが入ったりすることです。さらに、結果が大きくバラついて何も言えない場合もあります。また、実験装置の作製を含む研究の場合は、設計書どおりに組み立てても装置が思うように作動しないことがあるでしょう。このような時には、実験・調査計画(方法)、操作手順(プロトコール)あるは設計図を調整・変更して、実験結果が得られるように改良する必要があります(図4)。

どのような変更が必要かは問題により異なりますが、変更により実験方法の原理が損なわれないこと、結果の信頼性が損なわれないこと(むしろ向上すること)が必要です。また、一定の限定条件下でなければ結果が得られない場合には、実験・調査計画に限定条件を加える必要があります。計画(方法)の変更・改良を行うとき重要なことは、変更は1つのパラメーターごとに行い、その効果を確かめながら調整することです。一度に複数のパラメーターを変更すると何が問題かが分からなくなるからです。こうして調整を繰り返し、しっかりした信頼できる結果が得られる実験・調査方法を確立します。

また、別のタイプの実験・調査計画の変更が必要となる場合があります。当初の計画に基づく実験・調査の結果、結論を得るには実験・調査範囲を広げたり、新たな実験対象を加えたり、調査項目を追加したり、新たな対照実験を加えたりする必要が生じることがあります。当初の予想の範囲外に結果の評価(結論)を得るのに重要な転換点がある場合や、より細かな実験・調査点を設けなければ分からない場合や、結論に影響を与える新たな条件が明らかになった場合などにこのようなことは起こります。さらに、実験結果から当初の実験・調査計画では予想もしていなかったおもしろい結論が得られる可能性が出てきた場合も、同様に実験・調査計画の変更・追加や、時には問いの修正が必要になる場合があります。

以上のような実験・調査計画(方法)の再検討を経て変更・確定した詳細な実験手順、装置の操作手順などはWord(マイクロソフト)で清書し、自分独自の実験手順書(プロトコール)とします。

このような研究対象・現象や結果に合わせた実験・調査計画(方法)の調整・変更や追加は研究の新規性・創造性そのものです。通常の授業実験では経験しないことです。実験・調査に当たっては、実験計画をこなすことだけを考えず、信頼できる結果を求めていること、新規性のある面白い結果を求めていることを常に意識しながら取り組みましょう。また、「問い」、「実験・調査計画(方法)」、「結果」、「結論」の論理的一貫性は常に忘れてはなりません(*7)。

 *7 「問い」、「実験・調査計画(方法)」・「結果」・「結論」の論理的一貫性については「論文発表をめざす生徒理科研究法 第3章 研究計画作成法」参照。

6.薬品・機器の購入と研究経費

研究に用いる理化学機器・薬品等の購入のし方は、生徒の理科ホームページhttps://seitonorika.jpの関連情報ページに説明しました。基本的には学校に出入りしている専門業者を通じて行います。まず理化学機器カタログあるいは薬品カタログで希望する製品をさがし、商品番号と価格を知ります。指導教師を通じて、出入り業者にカタログと商品番号を知らせ、注文すると購入できます。まず、指導教師に相談しましょう。また、インターネット通販や店舗で購入できるものも多くあります(*8)。この場合もまず指導教師に相談しましょう。初めての器具の場合、カタログだけを見て購入を決めると購入後、当初の予想とは異なり失敗する場合があります。できるだけ実物を見てから、あるいは知っている人に問い合わせてから購入するのが適切です。なお、安全性や管理に特別な注意が必要な機器・薬品等は学校教師等を通じてしか購入できません。

生徒理科研究に必要な研究経費は、生徒理科研究が学校教育の一環として行われるかぎり学校の教育経費から支払われるべきです。しかしSSH校など一部の学校を除くと、現実には学校には予算がない、そのために研究を実施できないという場合も多くあります。この場合、何らかの方法で生徒自身あるいは指導教師が必要経費の全額または一部を準備すれば、研究を実施できる場合も多くあります。まず、指導教師に相談しましょう。外部から研究費を調達する方法もあります(*9)。

研究に使用する機器・薬品等を購入した場合は、かならず購入記録をとり、レシート・領収書等を保管します。研究費を誰が出したのかは論文出版の際に、重要になるのでしっかり記録をとります。研究費を出したのが、論文の著者またはその所属機関なのかそれ以外(外部資金)なのかは重要です。それ以外の者についてはかならず発表論文中に「謝辞」または「研究費補助金」の項でそのことを述べなければなりません(*10)。

*8 理化学機器カタログ・薬品カタログの情報や研究器具の購入先は、生徒の理科研究所ホームページ https://seitonorika.jpの関連情報ページ参照。
*9 生徒理科研究のための研究費助成情報 生徒の理科研究所ホームページhttps://seitonorika.jp の関連情報ページ参照。
*10 生徒の理科ホームページ
https://seitonorika.jp の「生徒の理科」生徒論文投稿ページ参照。

7.高価な分析機器や実験装置がないときの対策

大学とは異なり高校・中学は教育機関であり、高価な分析機器や装置がないのが普通です。しかし、研究の中でどうしても一定の分析装置や設備が必要になることがあります。そのときには、3つの解決方法があります。1つは、大学・公的研究機関に依頼して分析・測定をしてもらう、2つ目は、専門の会社等に依頼して分析等をしてもう、3つめは、レンタル会社から装置をレンタルして使用するという方法です。第1の大学・公的研究機関に依頼するという方法が多くの場合無料で最も容易かもしれません。大学は研究と大学教育を任務としていると思われがちですが、実は社会貢献ももう一つの重要な大学の任務です。実際、多くの大学の理念を調べるとほとんど(たぶん、すべて)の大学が社会貢献を挙げています。生徒理科研究の支援はこの社会貢献の重要な内容です。コネや有力な紹介者の有無は関係ありません。最寄りの大学に問い合わせてみてください。快く対応してくれる大学は多くあると思います。国公立・私立を問わずにです。発表論文では「材料と方法」と「謝辞」でこのことを述べます。第2の専門の会社等は料金を払って分析等を依頼するもので、ホームページ等からさがすとよいでしょう。この場合は、論文には、「材料と方法」に依頼先を記載します。無料で引き受けてくれる場合にはさらに「謝辞」に書きます。有料で依頼した場合は「謝辞」に書く必要はありません。第3の方法は、レンタル会社から設備を有料で一定期間レンタルし自分たちで使用するというものです。これは、装置の使い方をすでに知っている場合には有力な方法ですが、使い方を知らない場合には適切ではありません。発表論文には特に触れる必要はありません。

さらに、装置によっては別の対応も可能です。すなわち、理科教育系の雑誌やこれまでの生徒理科研究の報告書、あるいはインターネット等で紹介されている情報をもとに簡易型装置を手作りすることです。手作りすると、装置の性能はいまいちかもしれませんが、研究目的に必要な精度があればこれで十分で、研究の結論にあやまりは出ません。自分で装置をつくると、研究は格段に自由になるし原理も理解できます。この場合は、装置作製のための情報源は必ず論文に引用し、さらに自分で工夫した部分がある場合は、論文にそのことを書きます。これまでに発表のないはじめての簡易型装置の場合は、その作製自体が論文になるかもしれません。

8.中間報告書の作成

研究は長丁場の場合が多いです。そのような場合は、一つの実験・調査が終わる毎に、あるいは、数か月毎に定期的に中間報告書を作成し報告会を行いながら進めます。それまでの研究経過をまとめ、今後の計画を自分で確認する、あるいはグループ内(指導教師を含む)で共有するために行います。中間報告書はPowerPoint(マイクロソフト)で作成し、口頭発表を行います。発表会を他グループと合同で行うことも緊張感の確保という意味では良いかもしれません。

中間報告書は、研究計画書で作成したPowerPointファイル(*11)の変更により作成します。スライドは、「表題」、「はじめに」、「研究目的」、(「報告の要点」)、「材料と方法」、「結果と結論」、「考察」、「今後の計画」、「要旨」からなります。

*11 「論文発表をめざす生徒理科研究法 第3章研究計画作成法」参照

表題(1ページ) 研究課題と、生徒名、生徒の所属先、指導教師名、指導教師の所属先、所属先住所、連絡先(メールアドレス)を書きます。

連絡先(メールアドレス)は、指導教師のメールアドレスです。発表会後に発表内容についての質問等を受け付けたり議論をしたりするために書きます。学校等で研究(仕事)に使うメールアドレスを書き、私的なアドレスは書きません。

研究目的(1ページ) 研究目的を書きます。科学研究でいう「研究目的」とは、「問い(疑問)を明らかにすること」です。したがって、研究目的には「問い(疑問)~を明らかにすること」(1~2行)と書きます。しかし、もう少し説明を増やして、「実験調査計画(材料と方法)~で問い(疑問)~を明らかにすること」(2~4行程度)を「研究目的」とする場合が一般的です。研究目的とは研究の応用目的のことではありません。

なお、一つの研究課題のもとに複数の実験・調査計画がある場合は、全体をまとめる「研究目的」(1~2行)を書き、その下に各実験・調査計画に対応する「研究目的」を箇条書き(各1~3行程度)します。

報告の要点(1ページ) この報告書の要点を短い文章で箇条書きします。書き方は、「~について」などの項目書きではなく、「~を確認・確定した」あるいは「~を明らかにした」、「~を作製中である」のように内容を明確に書きます。これまでの研究で行ったこと、明らかにしたこと、現在取り組んでいることなどを書きます。後に、要旨(まとめ)となります。

実験・調査計画(材料と方法)(1~4ページ) まず、実験ノート、またはWord(マイクロソフト)ファイルに、実験・調査計画(材料と方法)を具体的・詳細に模式図と文章で書きます。実験材料(現象)、実験系(調査地)、実験・調査の流れ、実験装置、装置の操作手順、測定方法の原理、薬品、実験処理手順、データのとり方、統計処理・仮説検定法等を書きます。

PowerPoint(1~4ページ)には、中間報告発表時の実験・調査計画の説明に必要な重要事項だけを模式図と短い文章で書きます。また、一般(聴衆)によく知られていない実験・測定方法はその原理を模式図と短い文章で説明します。

独自の材料や実験系(実験装置)の提案・考案を目的とする研究の場合には、そのアイディアの詳しい内容(写真・模式図・設計図)は結果ページに書きます。

なお、複数の実験・調査を行うときは、各実験・調査ごとに、「③研究目的、④実験・調査計画、⑤結果と結論」をセットで1~3ページに書き、これを繰り返します。

遺伝子組み換え実験、動物実験、あるいは人を対象とする研究を含む場合は、遺伝子組換え生物等規制法、動物実験等の実施に関するガイドライン、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針、個人情報保護法を遵守している旨を1~2行で述べます。

結果と結論(1~4ページ)これまでに行った実験・調査の結果と結論を書きます。
結果」としては、これまでに得た結果を、写真、表、グラフと短い文章で表します。論文発表時に必要となる写真、表、グラフ等はすべて書きます。

グラフ・表・写真・模式図は、本シリーズ「第5章 ポスターと投稿論文の作成法」の「5.図・表の作成法」にもとづいて作成します(*12)。グラフと表はExcel(マイクロソフト)を用いて作ります。模式図はPowerPointを用いて作ります。写真(Jpegファイル)はPhotoshop(Adobe)(または無料画像処理ソフトGIMP)をもちいて必要な部分だけを切り抜いて用います。最後にこれらグラフ、表、模式図、写真をPowerPointに貼り付け、矢印や記号をつけて図とします。

*12 図・表の詳しい作成法は「論文発表をめざす生徒理科研究法 第5章 ポスターと投稿論文の作成法」の「5.図・表の作成法」参照。

研究開始初期の中間報告においては、最初に前に述べた「実験・調査手順の確認と技術の習熟」と「実験・調査計画(方法)の再検討と変更」にもとづき、実験・調査開始初期の取り組みで確認・確定した実験・調査手順、調整・変更した実験・調査手順、追加した実験・調査計画を詳しく書きます。調整・変更や追加については、その内容、理由、結果を書きます。また、他者の意見を聞きたい問題があれば、詳しく説明し、解決方法について自分の考え方を述べるとともに他者の意見を求めます。

すでに結果を得ている場合でも、単に結果を報告するだけでなく、前節の「実験・調査計画(方法)の再検討と変更」にもとづき、結果は信頼できるものであるか、実験・調査計画(方法)に変更・改良すべき点はないか、実験・調査範囲を広げたり、新たな実験対象を加えたり、調査項目を追加したり、新たな対照実験を加えたりすることが必要ではないかを検討した結果も報告します。

なお、前述の通り、独自の材料や実験系(実験装置)の提案・考案を目的とする研究の場合には、そのアイディアの詳しい内容(写真・模式図・設計図・作製方法)はこの結果ページに書きます。

また、物理学等で一定の理論計算を行い、実験結果による検証を行うときには理論計算や検証は結果ページに書きます。

結論」としては、結果から論理的に導かれる「結論」を書きます。このとき「結論」は、研究目的にあげた「問い(疑問)」に対する「答え」となっていなければなりません。ここでもう一度、結論が「生徒理科研究法 第3章 研究計画作成法 2.科学的論理に貫かれた研究計画をつくる」に照らして、正しい科学的論理にもとづいているか否かを検討します。

考察(1ページ) これまでに行った研究の「結果・結論のまとめ」と「新規性の学問的意義」について書きます。「結果・結論のまとめ」としては、これまでの研究で明らかになった結果と結論をまとめます。「新規性の学問的意義」としては、結果・結論のどの点に新規性があるのかを説明し、その学問的意義を書きます(*13)。また、社会的意義があればそれも書きます。また、研究の過程で明らかになったその他の新規の事柄についてもその新規性を説明し、その学問的意義や社会的意義を書きます。

*13 学問的意義と社会的意義の詳しい説明は、「論文発表をめざす生徒理科研究法 第5章 ポスターと投稿論文の作成法」の「6.研究の「意義」、研究結果の新規性の「意義」とは?」および「7.考察」には何を書けばよいのか? 」の節を参照。

今後の計画(1ページ) 実験・調査途中の場合には、「問題点の解決方法と実験・調査計画における残る課題」を述べます。

図5 研究の進み方 1つの実験・調査により最初の問いへの答え(結論)を得ると、その結果・結論を踏まえて次の問いを立て、その問いに答えるための実験・調査計画を立てる。

他方、1つの実験・調査終了後の場合には、「問い」、「実験・調査計画(方法)」、「結果」と「結論」の間の論理関係が大丈夫か、追加すべき実験調査計画はないかを検討し、問題がなければ1つの実験・調査の終了とします。この時には、これまでの実験・調査結果で論文発表・出版を行うのか否かが問題です。ここで論文発表・出版を行うなら、「今後の計画」は論文執筆として、新しい実験・調査計画は書きません。本シリーズの「第5章 ポスターと投稿論文の作成法」にもとづき論文発表(ポスター、口頭、投稿論文)の準備に進みます。他方、同じ課題の下にさらに新しい実験・調査を継続する場合は、つぎの実験・調査計画案を「論文発表をめざす生徒理科研究法 第3章 研究計画作成法」にもとづいて作成し提起します(図5)。

はじめに(1~2ページ) この研究を行う理由と、研究目的と、研究の新規性のレベルとを書きます。

研究理由」としては、論文の導入文を1~4行で書きます。いきなり課題を提起したり、対象とする現象を模式図入りで紹介したりします。つづいて、先行研究と関連情報にもとづきこの研究課題についてこれまでに何がわかっており、何が分っていないのかを数行~10行程度で書きます。「何がわかっていないのか」は、次に述べる研究目的の新規性が分かるような内容でなければなりません。個人的な思いや関心などいわゆる「個人的動機」は書きません。

研究目的」としては、先に書いた②研究目的にもとづき、実験・調査方法の概略とこの研究で明らかにしようとする問い(疑問)、すなわち、この研究ではどんな方法で何を新しく明らかにするのかを短く書きます。

最後に、この研究の「新規性のレベル」、すなわち、どのような範囲を調べたところ新規なのかを1~4行で述べます(*14)。

*14 論文発表に必要な新規性についての詳細な説明は「論文発表をめざす生徒理科研究法 第2章 研究には新規性が必要である」参照。

PowerPointとは別に、実験ノートまたはWord(マイクロソフト)ファイルに、先行研究と関連情報の引用元、重要な内容とそれに対する自分の評価(何が書かれていて何が書かれていないのか、疑問点など)を詳細に書き、自分の記録とします。

生徒研究発表会では「はじめに」に「仮説」を書いているものをよく見かけますが、「論文発表をめざす生徒理科研究法 第3章 研究計画の作成法」に述べたとおりこれは不適切です。「はじめに」には「問い(疑問)」を書きます。仮説は書きません(ただし、問いがyes/no質問の場合は問いが仮説となりますが)。

要旨(1ページ) ②「研究目的」と③報告の要点を1つにまとめて書き直し、この報告全体の「要旨」とします。

最後にスライドの順序を、①⑧②④⑤⑥⑦⑨とします。

そして、再度、全体の科学的論理性のチェックを行います。報告書全体を見て、「研究課題」「はじめに(研究を行う理由)」「研究目的(問い)」「研究・調査計画(材料と方法)」「結果と結論」「考察(学問的意義)」「要旨」が一貫した科学的論理で貫かれているか否かを検討し、問題がなければ中間報告書の完成です。

9.中間報告会

中間報告書ができれば発表会です。PowerPointをもちいて口頭発表します。発表スライドの構成は、「中間報告書」のものと同じで、「①表題」、「⑧はじめに」、「②研究目的」、「④実験・調査計画(材料と方法)」、「⑥結果と結論」、「⑥考察」、「⑦今後の計画」からなります。報告会用スライド作成で重要なことは、字の大きさと字体、線の太さ、図の大きさです。スライドのサイズを標準(4:3)(幅25.4cm、高さ19.05cm)と設定したとき、原則として説明文の字の大きさは最小で24ポイント、最大で48ポイント(表題など)です。字体はゴシック体太字。模式図の線は十分に太いものとします。細くては遠くから見えません。図は、スライド内に無駄な白地部分が大きくならないように配置します。

指導教師をまじえたグループ内報告会での報告は、時間制限なし(30分間~1時間程度)で徹底的にやります。用意したスライド1枚1枚について詳しく報告し議論をします。必要なら実験ノートも取り出し、正確に議論し、グループ内の情報共有を深めます。

他方、他グループとの共同報告会であれば、常識的に報告は12分間程度で、その後5~10分間程度の質疑応答です。この場合は、スライドは12枚、多くても15枚とし、各スライドについて話す内容をしぼり、時間内に重要なことを話し終えるように準備します。細かなことは質疑を通じて話します。

研究発表会における質疑応答は「中身のないディベイト」ではありません。発表会の目的は、人前で話すことにより、スライドの間違い、研究計画の修正・追加すべき箇所、より詳しく勉強すべき箇所、より丁寧に説明すべき箇所等を見つけることです。話すだけでも問題点に気付きます。発表会後は、必ず、発表中に気付いたことや他者の質問や意見をもとにスライド内容や話す内容を改善しましょう。

発表会の準備でもう一つ重要なことは聴く人の知識レベルを想定して発表内容や方法を準備することです。専門の大学教員や高校教師に話す場合、同学年の他生徒や専門外の教師に話す場合など、聞く人が違えば話し方が変わります。専門知識のある聞き手には専門用語をもちいて伝えると、多くの情報を正確に伝えることができます。しかし、専門知識のない人には、専門用語が多いと話が伝わりません。一般的には難しい内容を易しい言葉をもちいて正確に深い内容を伝える発表がすぐれた発表です。

なお、グループ内報告会と他グループとの共同報告会とは目的が異なるので、グループ内報告会の代わりに他グループとの共同報告会を当てることはできません。

この文章は、生徒の理科研究所ホームページ(https://seitonorika.jp)の「生徒理科研究法」から作成したものです。(2020年5月24日)
Ver.2 2020年7月11日