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2020-5h(一般記事) 論文発表をめざす生徒理科研究法 第5章 研究発表:ポスターと投稿論文の作成法

Seitonorika 2020-5,2020年7月29日掲載,ダウンロードPdf

生徒の理科研究所
〒623-0342 京都府綾部市金河内町奥地22番地, https://seitonorika.jp, uketuke@seitonorika.jp

目次 はじめに 1. 論文原案の作成 2.口頭発表 3.ポスターの作成法 4. 投稿論文作成の準備 5.投稿論文の作成法 6.図・表の作成法 7. 研究の「意義」、研究結果の新規性の「意義」とは? 8.「考察」には何を書けばよいのか? 9. 一般科学論文の例  10.よくある質問
類別:一般記事  分野:生徒理科研究法  キーワード:論文原案、論文作成、ポスター作成、図表作成

はじめに

研究成果の発表はまず研究発表会で行い、最終的には論文誌への投稿・出版で行います。研究発表会は多くの場合ポスター発表、まれに口頭発表です。論文誌への投稿・出版は文字通り文章で書かれた論文です。ここでは、論文原案の作成、口頭発表、ポスター作成、投稿論文作成の準備、投稿論文執筆の順番に説明します。

1.論文原案の作成

ポスター発表であっても口頭発表であっても論文投稿であっても、まずPowerPoint(マイクロソフト)で論文原案を作成します。研究計画書、あるいは、中間報告書で作成したPowerPointファイル(*1,2)を変更することにより作成します。図・表は後に述べる「5.図表の作成法」にもとづき作成します。

*1 「論文発表をめざす生徒理科研究法 第3章 研究計画作成法」参照
*2 「論文発表をめざす生徒理科研究法 第4章 実験・調査の実施と中間発表」参照

発表原案(PowerPointファイル)のスライド構成は、まず、「表題」、「研究目的」、「発表の要点」、「材料と方法」、「結果と結論」、「考察」、「はじめに」で作成し、最終的には、「表題」、「はじめに」、「研究目的」、「材料と方法」、「結果と結論」、「考察」、「要旨(まとめ)」とします。

表題(1ページ) 研究課題と、生徒名、生徒所属先、所属先住所、指導教師名、指導教師所属先、所属先住所、連絡先(メールアドレス)を書きます。

指導教師を論文の責任著者とする場合は、「指導教師」ではなく、「責任著者」とします。責任著者は、日常的に研究を指導し、論文内容に責任を持つことのできる研究指導者(学校教師または塾講師等)で、論文発表にかかわる一切の実務に責任を負う者とします。詳しい説明は、本稿の「5.投稿論文の作成法」参照。

連絡先(メールアドレス)は、責任著者または指導教師のメールアドレスです。発表会後に発表内容についての質問等を受け付けたり議論をしたりするために書きます。学校等で研究(仕事)に使うメールアドレスを書き、私的なアドレスは書きません。

研究目的(1ページ) 研究目的を書きます。科学研究でいう「研究目的」とは、「問い(疑問)を明らかにすること」です。したがって、研究目的には、「問い(疑問)~を明らかにすること」(1~2行)と書きます。しかし、もう少し説明を増やして、「(材料と方法)~で、問い(疑問)~を明らかにすること」(2~4行)を「研究目的」とする場合が一般的です。なお、研究目的は研究の応用目的のことではありません。

一つの研究課題のもとに複数の実験・調査がある場合は、全体をまとめる「研究目的」(2~4行)を書き、その下に各実験・調査に対応する「研究目的」を箇条書き(各2~3行)します。

発表の要点(1~2ページ) 発表論文の要点です。研究の結果・結論のまとめと、短い考察からなります。「結果・結論のまとめ」としては、実験・調査の結果と結論を短く箇条書きでまとめます(数行)。書き方は、「~について」などの項目書きではなく、「~であった」、「~を明らかにした」、「~を作製した」、「~を示す」のように内容を明確に書きます。「考察」としては、結果・結論の新規性の学問的意義(および社会的意義)のなかで主要なものを短く書きます(*3)(1~2行)。

*3 学問的意義と社会的意義の詳しい説明は、本稿の「7.研究の意義、研究結果の新規性の意義とは?」参照。

一つの研究課題のもとに複数の実験・調査がある場合は、「結果・結論」には、全体をまとめた結論を短く書き(1~3行)、その下に各実験・調査の「結果と結論」を箇条書きに(各1~3行)します。「考察」には、全体をまとめて結果・結論の新規性の学問的意義(および社会的意義)を短く書きます(*3)(1~3行)。

このページの内容は、発表原案作成をはじめる時点での考えをまとめるためのものです。最終的には発表原案作成の最後に書き直して「考察」や「要旨」の作成に用います。

材料と方法(1~4ページ) 「材料と方法」は、研究計画書や中間報告書で「実験・調査計画(材料と方法)」としていたものです。論文発表の段階では「材料と方法」に変更します。

まず実験ノートまたはWord(マイクロソフト)ファイルに、研究計画書や中間報告書にもとづいて「材料と方法」を具体的・詳細に模式図と箇条書き文章で書きます。実験材料(現象)、実験系(調査地)、実験・調査の流れ、実験装置、装置の操作手順、測定方法の原理、薬品、実験処理手順、データのとり方、統計処理・仮設検定法等を書きます。

論文原案のPowerPoint(1~4ページ)にはポスター発表や口頭発表時の「材料と方法」の説明に必要な重要事項だけを模式図や作業流れ図と短い文章で書きます。また、一般(聴衆・読者)によく知られていない実験・測定方法はその原理を模式図と短い文章で説明します。模式図や流れ図等は、本稿の「5.図・表の作成法」にもとづいて作成します。

遺伝子組み換え実験、動物実験、あるいは人を対象とする研究を含む場合は、遺伝子組換え生物等規制法、動物実験等の実施に関するガイドライン、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針、個人情報保護法を遵守していることを記します。

独自の材料・現象の提案や実験装置の作製を目的とする研究の場合には、その材料・現象の詳細な説明や実験装置の作製過程の詳しい説明(写真・模式図・設計図を含む)はこのページではなく、結果ページに書きます。

なお、複数の実験・調査を行ったときは、各実験・調査ごとに、「③研究目的(問い)、④材料と方法、⑤結果と結論」をセット(各実験・調査に1~3ページ)で書き、これを繰り返します。

結果と結論(1~4ページ) 実験・調査の結果と結論を書きます。

「結果」としては、これまでに得た結果を、グラフ、表、写真、模式図と短い文章で表します。まず、論文発表時に必要となるグラフ・表・写真・模式図をすべて作成します。グラフ・表・写真・模式図は、本稿の「6.図・表の作成法」にもとづいて作成します(*4)。グラフと表はExcel(マイクロソフト)を用いて作ります。模式図はPowerPointを用いて作ります。写真(Jpegファイル)はPhotoshop(Adobe)(または無料画像処理ソフトGIMP)をもちいて必要な部分だけを切り抜いて用います。最後にこれらグラフ・表・写真・模式図をPowerPointに貼り付け、矢印や記号をつけて図とします。

結果の説明では、再現性を十分に確認し、その旨を例数を含めて論文に記載します。数値データは適切な統計的仮説検定を行い、その結果を論文に記載します。量的データの特徴を記述するときは、例えば単に「大きい」というようなあいまいな(主観的な)表現は避け、「~に比べて大きい」と比較基準を明確にしながら述べます。実験区と対照区とを比較して、結果が何を意味しているのかを明らかにしながら書きます。また、一般的な方法に重要な変更を加えて独自の方法を確立した場合は、そのことを結果の中にも書き込みます。

「結論」としては、結果から論理的に導かれる「結論」を書きます。このとき「結論」は、研究目的にあげた「問い(疑問)」に対する「答え」となっていなければなりません。ここでもう一度、結論が「生徒理科研究法 第3章 研究計画作成法」の「2.科学的論理に貫かれた研究計画をつくる」に照らして、正しい科学的論理にもとづいているか否かを検討します。ネガティブデータや「有意差なし」の解釈では、「~とはならなかった」と「~ではない(ことが分かった)」との違いに注意します。因果関係を実証(証明)する論理、因果関係を推測する(新しい仮説を定立する)論理、既知の因果関係(仮説)を支持する(矛盾しないことを示す)論理の違いに注意して適切な表現で書きます。確信の程度があいまいな「考えられる」はできるだけ用いません。「~である」「~を示した・~を証明した」「たぶん~だろう」「~を示唆する」「~の可能性がある」「~かもしれない」「~を支持する・~と一致する」「~と矛盾しない」「~を否定する・~は否定される・~と矛盾する」「~の可能性は低い」など、確信の程度の明瞭な表現で書きます。

前述の通り、独自の材料や実験系(実験装置)の提案・考案を目的とする研究の場合には、そのアイディアの詳しい内容(写真・模式図・設計図・作製方法)はこの結果ページに書きます。また、物理学等で一定の理論計算を行い、実験結果による検証を行うときには理論計算や検証は結果ページに書きます。

なお、複数の実験・調査を行ったときは、各実験・調査ごとに、「②研究目的(問い)、④材料と方法、⑤結果と結論」をセット(各実験・調査に1~3ページ)で書き、これを繰り返します。

考察(1ページ) 「結果・結論のまとめ」と「新規性の学問的意義」について書きます。「結果・結論のまとめ」では、研究で明らかにした結果・結論を短くまとめます。前に作った「③発表の要点」を書き直すことにより作成します。「新規性の学問的意義」では、まず、結果・結論のどの点に新規性があるのかを先行研究や関連情報を引用しながら説明します。つづいて、その学問的意義、すなわちその結果・結論から導かれる(推測される)新しい考え方等について、先行研究や関連情報を引用しながら議論します(著者の考えを述べます)(*4)。また、社会的意義があればそれも書くことができます。さらに、研究の過程で明らかになったその他の新規事項についても、その新規性を説明し、その学問的意義や社会的意義を書くことができます。学問的意義は、新規のアイディア(仮説)を示す模式図を用いて説明することもできます。

*4 研究の学問的意義と社会的意義については、本稿「7. 研究の意義、研究結果の新規性の意義とは?」参照。

複数の実験・調査を含む研究の場合は、「結果・結論のまとめ」としては、まず、全体をまとめる「結果・結論」を述べ、その下に各実験・調査の「結果・結論」を短く箇条書きします。つづいて、全体で結果・結論の新規性について説明し、その学問的意義や社会的意義を書きます。

最後に、再度、「結果」と「結論」の間の論理性や、「新規の結果・結論の学問的意義」を検討し、これで今回の研究計画を終了してよいか、あるいは、追加の実験・調査が必要ではないのかを検討します。そして、これで今回の研究計画は終了してよい、論文発表が残るだけであると判断される場合は、「今後の研究計画」は書きません。しかし、追加実験・調査が必要な場合は、「今後の実験・調査計画」を書きます。

なお、複数の実験・調査を含む長い論文発表の場合、発表の最後に「結果・結論のまとめ」を箇条書きでしっかりとまとめたもう一つの文章を添えることがあります。短い「研究目的(研究理由)」や「材料と方法」、「考察(学問的意義)」を加えることもあります。この文章を「⑨発表論文(研究)の結論」と呼びます。「要旨」とほぼ同じ内容ですが、「要旨」には厳しい字数制限(たとえば400字以内)があるのに対し、この「発表論文(研究)の結論」には特に長さ制限がありません(一般にA4判1枚以内)。ポスター発表や口頭発表、あるいは論文審査においては、最後に「⑨発表論文(研究)の結論」を述べ、論文の主張(何を明らかにしたのか)を再度明確にして終るのが一般的です。しかし、ほとんどの投稿論文にはつけません。

はじめに(1~2ページ) この研究を行う理由(研究理由)と、研究目的と、研究の新規性レベルとを書きます。

「研究理由」としては、まず、論文の導入文を1~4行で書きます。いきなり課題を提起したり、対象とする現象を模式図入りで紹介したりします。つづいて、先行研究と関連情報(*5)にもとづき研究課題についてこれまでに何がわかっており、何が分っていないのかを文章(と模式図)で数行~10行程度で書きます。先行研究と関連情報は、引用元(著作者と発表年)を明らかにしながら書きます。「何が分かっていないのか」は、次に述べる「研究目的」の新規性と意義が分かるような内容になっていなければなりません。個人的な思いや関心などいわゆる「個人的動機」は書きません。

*5参照すべき先行研究と関連情報については、「論文発表をめざす生徒理科研究法 第2章 研究には新規性が必要である」参照。

「研究目的」としては、「②研究目的」で作成した内容を数行で書きます。ただし、複数の実験・調査を行った場合は、記述の繰り返しをなくすために、ここには「研究目的」の概要を書いて、各実験・調査のための個別の「研究目的」は次に来る各実験・調査のための「②研究目的(問い)・④材料と方法・⑤結果と結論」のセット内に書くこともできます。

「研究の新規性レベル」としては、どのような範囲を調べたところ新規なのかを1~4行で明瞭に説明し、生徒理科研究に必要な新規性レベルを超えていることを述べます(*6)。

*6 必要な新規性レベルについては「論文発表をめざす生徒理科研究法 第2章 研究には新規性が必要である」参照。

先行研究と関連情報については、まえもって実験ノート、またはWord(マイクロソフト)ファイルに、引用元、内容の要約とそれに対する自分の評価、すなわち、何が書かれていて何が書かれていないのか(あるいは問題点)をまとめます。これにもとづき「はじめに」の内容を書きます。

なお、生徒研究発表会では「はじめに」に特定の仮説を書いているものをよく見かけますがこれは不適切です。「はじめに」には研究目的(問い)を書きます(*7)。特定の「仮説」に固執すると自由な創造力が抑圧される恐れがあるからです。

*7 「論文発表をめざす生徒理科研究法 第3章 研究計画の作成法」の「仮説より問いが重要である」参照。

要旨(まとめ)(1~2ページ) 論文全体のまとめです。「研究目的」と「結果・結論のまとめ」を中心に箇条書きで短くまとめます。論文の冒頭部に位置し、この論文で何を明らかにしたのかを述べます。多くの場合、文字数制限(400~500字)があります「⑦はじめに(研究理由)」「④材料と方法」「⑥考察(学問的意義)」を短く入れることもあります。論文検索で論文内容の紹介文として表示される場合が多く、読者はまず要旨をよんでその論文全体を読むべきか否かを判断します。

最後にスライドの順序を、①⑦④⑤⑥⑧⑨とします。そして、もう一度、「はじめに(研究理由)(研究目的)」、「材料と方法」、「結果と結論」、「考察(結果・結論のまとめ)(新規性の説明と学問的意義)」、「要旨」の間の論理的一貫性をチェックし、ずれがある場合は修正します。

なお、複数の実験・調査を行った場合は、各実験・調査の②④⑤をセットで繰り返し、①⑦(②④⑤)(②④⑤)(②④⑤)⑥⑧⑨とします。

上に準備したスライドの他に、本稿の「5.投稿論文の作成法」に従いWordファイルに次の文章を書きます。謝辞、役割分担、利益相反、引用文献。

2.口頭発表

発表原案ができれば発表会です。口頭発表はPowerPointを用いて行います。発表スライドの構成は、「論文原案」のものと同じで、「①表題」、「⑦はじめに」、「④材料と方法」、「⑤結果と結論」、「⑥考察」、「⑨発表論文の結論」からなります。

ただし、「はじめに」の中の「研究目的」はしっかりと強調します。この研究で何を明らかにしようとしているのかをはっきりと示すためです。さらに、最後に「発表論文の結論」を入れ、この研究で何を明らかにしたのかを強調します。とくに、複数の実験・調査を行った場合には重要です。

各スライドは、口頭発表用にデザイン・表現方法を変更します。重要なことは、字の大きさと字体、線の太さ、図の大きさです。スライドのサイズを標準(4:3)(幅25.4cm、高さ19.05cm)と設定したとき、原則として説明文の字の大きさは最小で24ポイント(通常文)、最大で48ポイント(表題など)です。字体はゴシック体太字。模式図の線は十分に太いものとします。細くては遠くから見えません。図は、スライド内に無駄な白地部分が大きすぎたり偏ったりしないように配置します。文章は短文を箇条書きにして表現します。

指導教師をまじえたグループ内報告会では、時間制限なし(30分間~1時間程度)で徹底的にやります。スライド枚数にも制限はありません。用意したスライド1枚1枚について詳しく説明して議論します。必要なら実験ノートも取り出し、正確に議論し、グループ内の情報共有を深めます。個々のスライドについて、書くべき内容が正確に書かれているか、表現方法は適切か、内容の説明は適切かを検討します。また、「はじめに」「研究目的」「材料と方法」「結果と結論」「考察」の間の論理的一貫性について検討します。さらに、結果と結論の間の論理について、発表とは異なる考え方や批判的考え方の可能性を検討したり、結果・結論から得られる新しいアイディア(学問的意義)を出し合ったりして考え方の幅を広げます。

他方、生徒研究発表会での口頭発表であれば、常識的に報告は12分間程度で、その後5~10分間程度の質疑応答です。この場合は、スライドは12枚、多くても15枚とし、各スライドについて話す内容をしぼり、時間内に重要なことを話し終えるように準備します。細かなことは質疑を通じて話します。スライド毎に話すことはすべて文章で書き、スライドのどこを指しながら話すのかなども考えます。説明を聞きやすくするため、文が長くならないように短い文に区切って説明します。内容が仕上がると、すべて覚えてしまい、聴衆やスライドをみながらに自然に話ができるようにします。

発表会の一般的目的は、スライドの間違い、研究計画の修正・追加すべき点、より詳しく勉強すべき点、より丁寧に説明すべき箇所等を見つけることです。発表会で話すだけでも問題点に気付きます。発表会後は発表内容の見直しを行い、発表中に気が付いたことや他者の質問や意見をもとにスライド内容や話す内容を改善します。

発表会の準備でもう一つ重要なことは聴く人の知識レベルを想定して発表内容や方法を準備することです。専門の大学教員や高校教師に話す場合、同学年の他生徒や専門外の教師に話す場合など、聞く人が違えば話し方が変わります。専門知識のある聞き手には専門用語をもちいて伝えると、多くの情報を正確に伝えることができます。しかし、専門知識のない人には、専門用語が多いと話が伝わりません。一般的には難しい内容を易しい言葉をもちいて正確に伝える発表がすぐれた発表です。

 3.ポスターの作成法

図1 ポスターのデザイン1 実験・調査計画が1個の場合

研究発表会における発表の多くはポスターを用いて行います。ポスターは、先に作成した論文原案のPowerPointスライドをポスターファイルに貼り付けて作成します。ここではポスターサイズはよく用いられるA0判(841x1189mm)とします。

ポスターのデザインの特徴は、最上段に「発表番号」欄と「論文表題」欄が、第2段左上に「要旨」欄が、最下段に「考察」欄があることです(図1、2)。そして、第2段から最下段に向けて、「はじめに」、「材料と方法」、「結果と結論」を入れます。

実験・調査が複数ある場合は、実験・調査1、実験・調査2、実験・調査3、、、として、それぞれの実験・調査について、「研究目的(問い)」、「材料と方法」、「結果と結論」をセットで書き、これを繰り返します(図2)。

「表題」、「はじめに」、「材料と方法」、「結果と結論」、「考察」の内容は、論文原案で作成したページを貼り付けて修正してつくります。

ただし、発表の要点をしっかり伝えるために、「はじめに」の書き方には工夫が必要です。すなわち、「はじめに」の中の「研究目的」はしっかりと大きく書きます。この研究で何を明らかにしようとしているのかをはっきりと示すためです。さらに、「考察」の後に「発表論文の結論」を入れ、この研究で何を明らかにしたのかを強調することがよくあります。とくに、複数の実験・調査を行った場合には重要です。

図2 ポスターのデザイン2 実験調査計画が5個の場合

ポスター用スライド作成で重要なことは、原則としてポスターから2m離れた位置から無理なく読めるような字の大きさと線の太さで書くことです。字のサイズは、最小が32ポイント、最大が96ポイントで書きます。字体はゴシック体太字、模式図の線は十分に太いものとします。細くては遠くから見えません。図は、無駄な白地部分が広すぎないように注意しながら配置します。文章は短文を箇条書きにして簡潔な表現とします。

ポスターの準備でもう一つ重要なことは、ポスターはそれだけで自律していなければならないことです。すなわち、説明者がいなくても、ポスターを読むだけで内容が理解できるように書かれていなければなりません。ポスターは発表論文であって発表者のための説明資料ではないのです。

4.投稿論文作成の準備

投稿論文の作成は研究発表の最後のもっとも困難な作業です。文章で書くので、口頭発表やポスター発表に比べ、細部まであいまいさが許されず、きびしい論理性と文章力が要求されます。

図3 投稿論文の構成 A:実験・調査が1個の場合。B:実験・調査が複数の場合。

論文執筆の準備としては、「目次の作成」と、「図表の完成」です。「目次の作成」は、ワープロソフトWordで行います。論文原案をもとに大項目、小項目、段落項目をたてます(図3)。

大項目は論文原案のスライドに該当し、表題、要旨、はじめに、材料と方法、結果、考察、謝辞、役割分担、利益相反、引用文献、英文要旨、図表の説明からなります。「発表論文の結論」は論文審査の場合以外はつけないのが一般的です。

各大項目の下には小項目がつづきます。ただし、短い大項目では小項目を省くこともあります。具体的には、次節「5.投稿論文の作成法」にもとづき小項目をたてます。たとえば、大項目「表題」の下には、表題、全著者名・生徒/その他の別・所属先・所属先住所、責任著者名、責任著者のメールアドレス、責任著者の電話番号、責任著者の現在の勤務先名、責任著者の現在の勤務先住所の小項目を書きます。大項目「はじめに」の下には、研究理由、研究目的、結果・結論のまとめ、新規性のレベルの小項目を立てます。

小項目の下に段落を設けて具体的な内容を書くことになります。どのような段落が必要であるのかは実際に書き進めなければわかりませんが、この時点で必要性が明らかな段落については、段落項目として箇条書きします。できるだけ詳細に段落項目を書きだすと全体の構想が見えてきて後の執筆が容易になります。

「図表の完成」では、図表の順序や内容を再検討します。図表の作成法は、本稿の「6.図表の作成法」に説明しました。まず、図表の数は7個以下としなければなりません。8個以上の図表を用いるときは、関連あるものをまとめた組図とします。また、図表番号は、基本的に本文に現れる順序にあわせて貼り付けます。

各項目の執筆内容は、次節「5.投稿論文の作成法」に従います。執筆順序は書きやすいところから書きます。一般的には、「表題」、「材料と方法」、「結果」、「考察」、「はじめに」、「要旨(まとめ)」、「引用文献」、図表の説明、その他の順番で書くことが多いです。

論文執筆ではいくつかの大項目について、書き方が論文原案、口頭発表、ポスターとは異なるので注意が必要です。まず、投稿論文の「はじめに」には、「研究理由」・「研究目的」・「結果・結論のまとめ」・「研究の新規性レベル」を書きます。特に複数の実験・調査を行った場合は、「研究目的」と「結果・結論のまとめ」とは長くなりすぎないように短くまとめて書きます。

投稿論文でいう「結果」は論文原案の「結果と結論」のことです。さらに、複数の異なる実験・調査を行ったときは、論文執筆では「材料と方法」と「結果」の書き方が論文原案、口頭発表、ポスターとは少し異なるので注意が必要です(図3)。まず、「材料と方法」の説明を実験・調査ごとに分けずに主要な方法はすべて大項目「材料と方法」に書きます。また、大項目「結果」のしたに、各実験・調査のための中項目を作成し、実験・調査毎に結果・結論を書きます。各項目では、導入文として、まず、その実験・調査の研究目的(問い)と実験調査(材料と方法)の概略を短く述べ、つづけて結果と結論を書きます。これを実験・調査の数だけ繰り返します。

次節の「5.投稿論文の作成法」は、「生徒の理科」誌の論文投稿規定です。投稿論文は論文誌の定める投稿規定にもとづいて作成します。

5.投稿論文の作成法

①論文は本文と図・表に分けて作成します。本文は、Word(マイクロソフト)または相当ワープロソフトを用いて作成します。論文原稿用紙はA4判とし、段組みは1段、字の大きさは12ポイントとします。図・表については次節に記します。

②論文本文の文体は、「である」調とし、常用漢字、現代仮名使いで書きます。学術用語は教科書や文部科学省学術用語集等に従います。

③論文本文は、「表題」、「著者名・生徒/その他の別・所属先・所属先住所」、「責任著者」、「要旨」と「分野・追加キーワード」、「はじめに」、「材料と方法」、「結果」、「考察」、「謝辞」、「役割分担」、「利益相反」、「引用文献」、「(英文)表題・著者名・要旨」、「図の説明」の順で書きます。短い論文の場合は結果と考察をいっしょにして「結果と考察」としても結構です。

④論文本文原稿の1ページ目に、表題、全著者名、生徒/その他の別、所属先、所属先住所、責任著者名、責任著者のメールアドレス、責任著者の電話番号、責任著者の現在の勤務先名、責任著者の現在の勤務先住所を書きます。

⑤「表題」は簡潔で論文の内容と結論が読者に伝わるものにします。人目を引くだけで情報量の少ないものは避けます。特定の生物を研究材料とした場合は、「表題」にその学名(属名 種名)を斜字で入れます。(例)カイコ(Bombyx mori)。

⑥「著者名」は実際に研究を行った生徒と研究指導者(学校教員または塾講師等)の名前とします。著者名は研究への貢献度の高い者から順番に並べます。最後の著者名は責任著者とします。「生徒/その他の別」は高校・中学生徒の場合は著者名の後に「∗」印を付けます。「所属先」は、その研究が行われた学校または塾等の名称とします。ただし、所属学校以外の機関(塾等)で研究を行った場合の生徒の所属先は、その機関の名称と所属学校の名称との両方とします。

⑦「責任著者」は、日常的に研究を指導し、論文内容に責任を持つことのできる研究指導者(学校教師または塾講師等)で、論文誌編集部との連絡、出版料の支払いなど論文出版にかかわる一切の実務に責任を負う者とします。責任著者名・メールアドレス・現在の所属先を書きます。メールアドレスは仕事(研究)用のコンピュータメールのものを書き、私的なものや携帯メールは書きません。現在、所属がない場合は責任著者名・メールアドレスを書きます。

⑧論文本文原稿の2ページ目には、要旨・分野・追加キーワードを書き、つづけて以降の本文を書きます。

⑨「要旨」は、研究目的と結果・結論を中心に論文を400字以内にまとめた文章です。論文検索でかかるように情報量の多い文章とします。「分野」は、関係する高校理科系科目名の1つを、生物、化学、物理、地学、数学、農業、生活、工業、その他の中から選んで書きます。「キーワード」には論文検索向けに論文内容を適切に表す重要語句を4個以内書きます。

⑩「はじめに」には研究理由と、研究目的と、結果・結論のまとめと、新規性のレベルを書きます。「研究理由」としては、まず論文の導入文を短く書きます。いきなり課題を提起したり、対象とする現象について模式図を使って紹介したりします。つぎに、先行研究と関連情報にもとづき研究課題についてこれまでに何がわかっており、何が分っていないのかを書きます。先行研究と関連情報は、引用元(著作者と発表年)を明らかにしながら書きます。「何が分かっていないのか」は、次に述べる「研究目的」の新規性と意義が分かるような内容になっていなければなりません。個人的な思いや関心などいわゆる個人的動機は書きません。

「研究目的」としては、実験・調査方法の概略と研究目的(問い)、すなわち、この研究ではどんな方法で何を新しく明らかにするのかを書きます。ただし、複数の実験・調査を行った場合は記述を簡略化し、研究目的概要を書くこともできます。「結果・結論のまとめ」としては、主要な結果と何を明らかにしたのかを簡潔に書きます。なお、研究目的は研究の応用目的のことではありません。また、「はじめに」には「問い」を書きます。「仮説」は書きません。

「新規性のレベル」としては、どのような範囲を調べたところ新規なのかを簡潔に説明し、生徒理科研究に必要な新規性レベルを超えていることを述べます。

⑪「材料と方法」には、実験材料(現象)・実験系(調査地)、実験・調査の流れ、実験装置、薬品、実験処理手順、データのとり方、統計処理・仮設検定法等を書きます。研究対象、材料、重要な薬品と装置などは特別の事情がある場合を除き、一般的名称だけではなく製品名、型番、製造会社名も書き、同分野の研究者なら追試ができるように書きます。実験・調査計画の説明に必要な場合は、模式図や作業流れ図を書くこともあります。また、一般(読者)によく知られていない実験・測定方法はその原理を模式図と文章で説明します。模式図や流れ図等は本稿の「5.図・表の作成法」にもとづいて作成します。複数の実験・調査・計算を行った場合でも主要な方法はすべてこの節にまとめて書きます。

遺伝子組み換え実験、動物実験、あるいは人を対象とする研究を含む場合は、遺伝子組換え生物等規制法、動物実験等の実施に関するガイドライン、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針、個人情報保護法を遵守していることを記します。

独自の材料・現象の提案や実験装置の作製を目的とする研究の場合には、その材料・現象の詳細な説明や実験装置の作製過程の詳しい説明(写真・模式図・設計図を含む)はこのページではなく、結果ページに書きます。

⑫「結果」には、実験・調査・理論計算の結果と結論を書きます。また、その他のことで新規に分かったことを書くことができます。

「結果」としては、実験・調査・理論計算により得た結果を、写真、表、グラフと文章で表します。まず、論文発表時に必要となる写真、表、グラフ等をすべて作成します。グラフ・表・写真・模式図は、本稿の「6.図・表の作成法」にもとづいて作成します。グラフと表はExcel(マイクロソフト)を用いて作ります。模式図はPowerPointを用いて作ります。写真(Jpegファイル)はPhotoshop(Adobe)(または無料画像処理ソフトGIMP)をもちいて必要な部分だけを切り抜いて用います。最後にこれらグラフ、表、模式図、写真をPowerPointに貼り付け、矢印や記号をつけて図とします。

結果の説明では、再現性を十分に確認し、その旨を例数を含めて論文に記載します。数値データは適切な統計的仮説検定を行い、その結果を論文に記載します。量的データの特徴を記述するときは、例えば単に「大きい」というようなあいまいな(主観的な)表現は避け、「~に比べて大きい」と比較基準を明確にしながら述べます。実験区と対照区とを比較しながら記述することにより、結果が何を意味しているのかを明らかにしながら書きます。また、一般的な方法に重要な変更を加えて独自の方法を確立した場合は、そのことを結果の中にも書き込みます。

「結論」としては、結果から論理的に導かれる「結論」を書きます。このとき「結論」は、研究目的の「問い(疑問)」に対する「答え」となっていなければなりません。因果関係を実証(証明)する論理、因果関係を推測する(新しい仮説を定立する)論理、既知の因果関係(仮説)を支持する(矛盾しないことを示す)論理の違いに注意して適切な表現で書きます。ネガティブデータや「有意差なし」の解釈では、「~とはならなかった」と「~ではない(ことが分かった)」との違いに注意します。確信の程度があいまいな「考えられる」はできるだけ用いません。「~である」「~を示した・~を証明した」「たぶん~だろう」「~を示唆する」「~の可能性がある」「~かもしれない」「~を支持する・~と一致する」「~と矛盾しない」「~を否定する・~は否定される・~と矛盾する」「~の可能性は低い」など、確信の程度の明瞭な表現で書きます。

前述のように、独自の材料・現象の提案や実験装置の製作を目的とする研究の場合には、その材料・現象の詳細な説明や実験装置の作製過程の詳しい説明(写真・模式図・設計図を含む)はこの「結果」に書きます。また、物理等で一定の理論計算を行い実験結果による検証を行ったときは、理論計算や検証結果はこの結果ページに書きます。

複数の異なる実験・調査を行ったときは、「結果」の下に各実験・調査のための節を作成し、実験・調査毎に結果・結論を書きます。各節では、導入文として、まず、その実験・調査の研究目的(問い)と実験調査(材料と方法)の概略を短く述べ、つづけて結果と結論を書きます。これを実験・調査の数だけ繰り返します。

⑬「考察」には、「結果・結論のまとめ」と「新規性の学問的意義」について書きます。「結果・結論のまとめ」では、研究で明らかにした結果・結論を短くまとめます。このとき、「結論」は「はじめに」で提起した問いに対する結果にもとづく回答となっていなければなりません。「新規性の学問的意義」では、まず、結果・結論のどの点に新規性があるのかを先行研究や関連情報を引用しながら説明します。つづいて、その学問的意義、すなわちその結果・結論から導かれる(推測される)新しい考え方等について、先行研究や関連情報を引用しながら議論します(著者の考えを書きます)。この時、新規のアイディア(仮説)等を模式図を示しながら説明することもできます。また、社会的意義があればそれも書くことができます。さらに、研究の過程で明らかになったその他の新規事項についても、その新規性を説明し、その学問的意義や社会的意義を書くことができます。「今後の計画」は書きません。しかし、将来の期待される研究方向については書くことができます。

考えを述べるときは、確信の程度があいまいな「考えられる」はできるだけ用いません。「~である」「~を示した・~を証明した」「たぶん~だろう」「~を示唆する」「~の可能性がある」「~かもしれない」「~を支持する・~と一致する」「~を否定できない・~と矛盾しない」「~を否定する・~は否定される・~と矛盾する」「~の可能性は低い」など、確信の程度の明瞭な表現で書きます。

複数の実験・調査を含む場合は、まず、実験・調査全体で何を明らかにしたのかを書き、つづいて各実験・調査で明らかになった「結果・結論」を短く列記します。考察は、「結果・結論」の新規性について説明し、その学問的意義や社会的意義を書きます。

⑭「謝辞」には、研究の遂行や論文作成で協力を受けた人に対する謝辞を書きます。たとえば、研究材料の提供、実験器具の貸与、研究場所の提供、助言、情報提供、論文のチェックなどです。「研究費補助金」には、研究経費や論文出版料の支援を受けた場合はその名称を書きます。支援を受けていない場合は「研究費補助金はなし」と書きます。

⑮「役割分担」には、各著者について、「名前:役割」を書きます。役割は「研究企画」・「材料準備」・「実験実施」・「技術指導」・「データ処理」・「図表作成」・「論文作成」など簡潔な言葉で書きます。

⑯「利益相反」には、この研究課題に関して著者または著者の所属組織が営利企業または営利追求団体や個人からうけた援助・便宜について書きます。企業・団体・個人名とうけた援助・便宜の内容を簡潔に書きます。ない場合は「利益相反はなし」と書きます。

⑰論文は、一般的に明らかなことや先行研究等で明らかにされていることはすべて引用元を明らかにしながら書きます。著者がこの研究で明らかにしたことあるいはあらたに提起した考え方以外の内容はすべて引用元を明らかにしなければなりません。あいまいな伝聞や引用元の不明なことがらについては科学情報としては引用できません。 「出典(引用元)」は本文中に「著者名(発表年)」を記入することにより示します。ただし、著者が3名以上の場合の著者名は「第1著者名ほか」とします。著者名は姓だけを書きます。

(本文中での引用のし方)
(2名の時)――――この変化は常温では起こらない(村辻・村辻,2018)。
(3名以上の時)――――村辻ほか(2010)はこの現象を――――――

⑱インターネット上のホームページは重要な情報源です。しかし、そこから得られる情報の取り扱いには注意が必要です。インターネット上にある情報は基本的には原文献にまでさかのぼり、正式の引用を行います。査読のない紙誌に発表された報告や論文は、その信頼性には注意が必要ですが著者が重要と認めるなら引用できます。一方、著者や責任者が特定できないインターネットや紙誌の情報は信頼できる科学情報とみなすことはできません。根拠データの示されないブログ・ツイッター等の記事やホームページ情報は根拠ある科学情報としては引用できません。しかし、あいまいなインターネット情報や根拠の示されない情報を対象としてその傾向や真否を研究・調査することはできます。

⑲「引用文献」には、本文中に引用したすべての文献の文献情報を書きます。本文中に引用しなかった文献は書きません。ローマ字で表した時のABC順でリストします。文献情報の書き方は引用文献の種類により異なります。論文誌に掲載された論文の場合は、全著者名、発行年、論文の表題、掲載論文誌名、巻(号)、ページを書きます。単行本の場合は、著者名、発行年、本の表題、出版社名を書きます。編集(監修)本に掲載された論文の場合は、論文著者名、発行年、論文(章)の表題、本の表題、編集(監修)者名、出版社名、論文ページを書きます。教科書や参考書は単行本と同様に書きます。ただし、教科書は著者名の最後に出版社名も入れます。web論文誌やweb書籍の場合は、一般の論文誌や書籍と同様に書き、最後にDOI(デジタルオブジェクト識別子)(ある場合のみ)を書きます。論文コンテスト受賞論文の場合は、著者名、コンテスト実施年、論文の表題、コンテスト名、受賞名を書きます。一般のwebページの記事の場合は、記事著者名(ページ責任者・団体名)、(発行年または最終更新日)、記事表題(またはページ表題)、サイト名(~ホームページ)、ページアドレス(http://)、アクセス日時(yy/mm/dd)を書きます。具体的な書き方は、下の例や「見本論文」を参考にしてください。なお、単なる投稿サイトのweb記事や、記事著者名(ページ責任者・団体名)とサイト責任者名(団体・会社名)のないweb記事は引用することはできません。どんな引用の場合も、著者名には全員の氏名を書きます。

(「引用文献」での書き方)
論文誌に掲載された論文の場合  村辻理男・村辻秀雄(2018): あたらしい細胞観察法、生徒理科研究 4(2):16-31.
単行本の場合  村辻理男(2018): あたらしい細胞観察法,生徒の理科出版.
編集本に掲載された論文の場合  村辻理男(2016): あたらしい細胞観察法、これからの生徒理科研究、村辻理科子(編)、生徒の理科出版、56-85.
論文コンテストの受賞論文  村辻理男(2017): 新しい細胞観察法、第3回学生理科研究コンテ、優秀賞.
一般のwebページの場合  生徒の理科研究所(2016): 「生徒の理科」とは、生徒の理科研究所ホームページ、https://seitonorika.jp/journaltop/、2018/07/26.

⑳「(英文)表題・著者名・要旨」は、表題・著者名・要旨の英訳です。英文に不安のある方は有料の科学論文校閲をご利用ください。

㉑「図の説明」は、図の下につける表題と説明です。図1、図2というように図に通し番号をつけ、表題と説明文を書きます。組図の場合は、さらに各図を図1A、図1B、図1Cというように分けます。さらに図が多い場合は、図1A1、図1A2、図1A3というように分けることもあります。図に入れた矢印や記号の説明は図番号と表題に続けて書きます。表の説明は、一般に表の一部として表の下に書き入れます。しかし、説明が長くなる場合は、説明部分は表とは別に「図の説明」の最後に「表の説明」として書きます。

6.図・表の作成法

①「図・表」は、各図・表について出版論文に載せる時の大きさで作成します。図には(写真やグラフ、模式図、数式)を含みます。出版論文の用紙サイズはA4版、段組みは2段となるので、この段幅、ページ幅を考慮しながら図・表の大きさを決めます。

②図・表の合計数は、7個以下とします。図・表の数が多い時は複数のものを1つの組図にまとめ、合計数を7個以下とします。図と表を合わせて1つの組図とすることもできます。

③図・表には図番号を付けます。図番号は、図1、図2、図3、、、というように付けます。組図の場合は、さらに各図を図1A、図1B、図1Cというように分けます。さらに図が多い場合は、図1Aを図1A1、図1A2、図1A3というように分けることもあります。各図(図1、図2、、、、)の表題と説明文は、論文本文の最後の「図の説明」欄に書きます。

表も図と同じように表1、表2、、、というように番号を貼り付けます。ただし各表の表題と説明は表の上下に書き込みます。表題は表の上に書き、説明は表の下に書きます。

④グラフの作成にはExel(マイクロソフト)、写真の処理はPhotoshop(Adove)(または無料画像処理ソフトGIMP*8)、模式図の作成はPowerPoint(マイクロソフト)、表の作成はExelを用いると便利です。すべて出版論文に載せる時の大きさで作成します。写真の場合は必要の部分だけをPhotoshop(またはGIMP)で切り抜いて使います。こうして作成した原図をPowerPointの「デザイン・ページ設定・スライドサイズA4・スライド縦(19cmx27.5cm)」のページにはりつけ、複数の図を組み合わせたり、図の大きさを変更したり、矢印や記号を入れたりして最終的な図を完成します。 各図・表はべつべつのPowerPointページに作成します。図・表に入れる字・線の大きさと太さは、論文印刷時の大きさ・太さを考えて決めます。

*8 画像処理ソフトの操作手順はPhotoshopの方法で説明します。GIMPを用いるときは同等の処理をGIMP操作法に従って行います。GIMPのダウンロードと操作法はインターネットで調べます。

⑤最後にPowerPointファイルから解像度330dpiのJPEGファイルを作成します。PowerPointで保存すべきスライドを出し、「ファイル」「名前を付けて保存」を選択します。保存場所を指定した後、出てきた画面で「ファイルの種類」を「JPEGファイル交換形式(*.jpg)」とし、同画面下段の「ツール∇」をクリックし「画像の圧縮」を選択します。出てきた画面で「HD(330dpi):高解像度(HD)表示用」をチェックし「OK」をクリックします。元に戻るので「ファイル名」を入れて「保存」をクリックします。出てきた画面で「このスライドのみ」をクリックするとJPEGファイルが保存されます。このJPEGファイルをPhotoshop(またはGIMP)で開き、必要な部分だけを切り抜き、新ファイルとしてJPEGで保存します。これで330dpiの投稿用のJPEG図ファイルが完成します。なお、投稿用JPEG図ファイルにはファイルサイズ3MB以下という制限があります。3MBを超える場合はPhotoshop(またはGIMP)でサイズを小さくします。

7.研究の「意義」、研究結果の新規性の「意義」とは?

意義とはすでに価値が認められている他のこととの関係性をさします。したがって意義を書くとは、すでに価値が認められている他のこととの関係を述べることになります。では、科学研究においてすでに価値が認められていることとはなにか。1つは学問的意義で、もう一つは社会的意義です。学問的意義としては、その研究や新規の結果が学問の内容的発展にどのように役立つのかを述べます。だだし、生徒理科研究の場合は、学問の内容的発展にどのように役立つのかは、生徒理科研究の内容的発展にどのように役立つのかと言いかえることができます。これまでの生徒理科研究になにを付け加えたのか、どのような修正の必要性を指摘したのか、あるいは、今後の生徒理科研究にどのような影響を与えるのかを述べることになります。この学問的意義はすべての科学論文に必須のもので欠かすことはできません。一方、社会的意義としては、一般に価値の認められている応用目的、すなわち、人間生活の向上にどのように役立つのか、生命の尊重にどのように役立つのか、あるいは自然環境の保護にどのように役立つのか、その可能性を説明します。こちらは、論文に必須ではありません。ある場合には述べます。

なお、このほかによくある意義の説明として、「将来の研究計画のための基礎データをとる、あるいは実験・調査方法を確立あるいは習得する」など、将来の研究のための準備を強調するものがあります。これは研究の初期段階の途中発表などによく見られるものです。しかし、その準備研究自体に独立した意義がなく、その結果を用いて本来の研究に取り組まなければ意味がない場合は、研究発表会での研究経過発表はできますが、論文発表の意義とすることはできません。論文発表には、その基礎データや実験・調査方法の確立自体に独立した発表意義(新規性)が必要です。

現在の生徒理科研究発表会や論文コンクールで、研究あるいは新規の研究結果の学問的(生徒理科研究における)意義を述べている発表はほとんどありません。審査委員の講評の中に見られるだけです。研究の意義は、第一に研究を行ったもの(あるいは発表者)自身が述べることです。研究の意義を考え、自ら主張できるようになりましょう。

8.「考察」には何を書けばよいのか?

論文投稿のページにあるように、「考察」には、まず、①研究の結果・結論のまとめを書きます。このまとめは「はじめに」で提起した問い(疑問)に対する結果にもとづいた回答となっていなければなりません。つぎに、②研究結果・結論の新規性について、一般情報や先行研究等を引用しながら説明し、つづいてその新規性の学問的意義と社会的意義(*9)を議論します。

*9学問的意義と社会的意義の詳細な説明は前節「研究の意義、研究結果の新規性の意義とは?」参照

生徒研究発表会でよくみかける間違いは、「回答(結論)」とそれに続く議論の部分です。本来なら、「はじめに」で提起した疑問に対する著者としての回答(結論)を「結果に基づいて」書くべきです。ところが、結果にもとづく回答をせずに、教科書や専門書の既知情報に基づいて「仮説」・「結果」・「回答(結論)」の正しさを論証しようとすることです。特に、結果があいまいで確かな「回答」ができないときや、結果が期待するものとはならなかった場合に見られます。しかしこの態度は誤りです。書くべきは、この研究の結果からどのような結論が論理的に導かれるのかです。著者がどのような信念を持っているのかではありません。そもそも、実験・調査を行う前から何が真理か分かっているのならその研究は行う必要なかったはずです。どんな実験結果であっても、まずは、目の前の実験結果にしっかりと向き合いましょう。

まず、結果が明瞭でそこから明確な結論が得られる場合には、その結論を書きます。結果が仮説を支持する場合でも、否定する場合でもです。そして、結果・結論と既知情報を慎重に照らし合わせ、今回の研究結果のどの部分が既知情報と一致し、どの部分が新規なのかを検討し、結果・結論の新規性を正確に明らかにします(*10)。さらに、この新規な結果・結論が既知情報にどんな新しい内容を付け加えるのか、あるいは、既知情報にどんな修正を求めるのか、さらに、どんな新しい研究課題を提起するのかを議論し、この研究の学問的意義を明らかにします。また、(可能な場合は)社会的意義を書きます。

*10 新規性の詳細な議論は「論文発表を目指す生徒理科研究法 第2章 研究には新規性が必要である」 参照。

一方、結果が当初の期待とは異なり、あいまいで(値が中間的、または、バラつきが大きく)確かな結論を出せないなら、「結果の値が中間的またはバラつきが大きくて確かな結論を得られない」と正確に書きます。そして、つづく「議論」では、その原因は何かを議論します。中間的な値または大きなバラつきの原因が、実験・調査の方法・計画に問題がある場合は、明確な結果・回答を得ることができる方法・計画を考察します(この場合は、実験・調査をやり直すのが原則です。そもそも、信頼できない結果は論文発表・出版はできません)。もう一つは、中間的な値あるいはバラつきの大きさの原因が、対象とする現象と問い(疑問)との関係の低さ、あるいは無関係による場合です。この場合は、対象とする現象と問い(疑問)との関係が低い、あるいは、無関係であると考察します。この場合、結果・結論は真実を反映しており、新規性がある可能性があります。

以上のような考察方法は、結果・結論が当初の想定や仮説と一致した場合でも異なった場合でも同じです。忘れてはならないことは、実験・調査で求めるべきは当初の想定や仮説に一致した結果ではなく、「問い」に答えることのできる、あるいは「仮説」の真偽を判断できる、明瞭な結果です。また、研究の価値は、結果・結論の新規性の中にあります。ここから分かることは、実験・調査は信頼できる明瞭な「結果」こそ命であることです。再現性のない結果や未熟な技術によるデータのバラつきをそのまま結果として採用していては、新発見はできません。実験においては、再現性が出るようになるまで、実験・調査方法の工夫と試行錯誤、技術の習得を行うことが重要です。

9.一般科学論文の例

ここまで生徒理科研究論文の書き方をのべてきました。以下は英語で書かれた一般研究論文(full paper)(大学院レベル)の例です。論文がどのようなものかの理解の参考にしてください。論文表題またはDOI番号でグーグル検索すると論文のPDFファイルをダウンロードできるホームページが見つかります。

・Akagawa H., Hara Y., Togane Y., Iwabuchi K., Hiraoka T., Tsujimura H. (2015): The role of the effector caspases drICE and dcp-1 for cell death and corpse clearance in the developing optic lobe in Drosophila. Dev Biol. 404(2):61-75. DOI:10.1016/j.ydbio.2015.05.013
・Nagano H., Fukudome A., Hiraguri A., Moriyama H. and Fukuhara T. (2014): Distinct substrate specificities of Arabidopsis DCL3 and DCL4. Nucleic Acid Research 42: 1845-1856. DOI:10.1093/nar/gkt1077
・Sekimura T., Fujihashi Y., Takeuchi Y. (2014): A model for population dynamics of the mimetic butterfly Papilio polytes in the Sakishima Islands, Japan. J Theor Biol. 361:133-40. DOI:10.1016/j.jtbi.2014.06.029

10.よくある質問

①論文発表に必要とされる研究データ量はどのくらいか。

研究のデータ量は、分野や研究課題によりことなります。また、これまでの生徒理科研究の程度や、1人で行うのか数人のグループで共同研究をするのかによって異なります。さらに、新しく設定した課題に取り組むのか、それとも先輩が行ってきた研究を引き継ぐのかによっても異なります。当然、研究を行う人にもよります。したがって一概に基準を決めることはできません。しかし、ごく一般的に言えば、高校生活3年間で自分の名前の入った論文を1つ出版することができれば高校生としては素晴らしいと思います。

実際の取り組みでは、高校生には他にもやるべきことがたくさんあるので、それとのバランスが重要です。研究論文はデータを小分けした浅いものより、深く徹底的に研究したものに価値があります。ここから考えれば、一般論文(full paper、図表7個以下)なら研究計画の作成から論文投稿までの取り組みに2年間(1日2~3時間を140日)程度かけたデータ量が標準で、短報(short report、図表3個以下)はその半分以下でも可能でしょう。重要なことは、新規性と意義のある問い(疑問)に対する明解な回答(結論)があるか否かです。実験をそつなく無難にとりまとめただけの実験報告書は論文ではありません。ちなみに、大学の理系学部の4年生は、大学院進学のための受験勉強や就職活動の時期を除いて計算して、7~8か月間は週5日間・毎日6~8時間(1日6~8時間を150日)かけて卒業論文研究に取り組みます。これに比べれば、高校・中学生徒が行う研究は軽いといえます。全世界的・全歴史的視野での本格的な研究は大学ではじめて可能です。また、本格的な技術の習得や設備の使用は大学ではじめて可能になります。したがって、高校生は大学進学のための勉強をおろそかにせず、バランスをとりながら生徒理科研究に取り組みましょう。

②研究発表会や論文コンクールにおける審査と、論文出版の際の査読とはどのように違うのか。

(答え)この2つは、目的・評価内容・評価方法の点で大きく異なります。第1に、研究発表会や論文コンクールにおける審査は発表論文に順位をつけて受賞者を選ぶために行われます。しがたって発表論文に対する質問やコメントは発表内容や発表者の考え方・理解の程度を正確に評価するためにおこなわれます。また、応募者全員に等しくは行われず、一部の受賞可能性のある者に対してのみ詳細に行われ、順位づけに利用されます。そして賞の数だけ受賞者が選ばれます。一方、論文出版の際の査読は、投稿論文の出版可否の判断と論文内容の改善のために行われます。したがって査読では、出版可否の判断とともに問題点の指摘と出版可とするために必要な改善方法の提案が行われます。また、指摘・コメントは論文すべてに対し等しく論文に応じた内容で行われます。さらに出版の可否判断はその論文自身の評価に基づき行われ、論文数による制限はありません。第2に、研究発表会やほとんどの論文コンクールにおける審査はポスターあるいは研究概要(論文)と口頭発表により評価され順位付けに利用されますが、評価内容のフィードバックや書き直しによる再評価はありません。しかし、論文出版の際の査読は、文章として書かれた論文について行われ、評価・コメントは文書で著者に知らされ、追加実験・書き直しが求められます。書き直された論文は再評価され、一定のレベルに達したものだけが出版可とされます。

③論文コンクール・研究発表会での受賞と査読有り論文誌への出版では、どのような違いがあるのか。

(答え)大げさに言うと、社会的な意義あるいは発表者の人生における意義に違いがあります。論文コンクール・研究発表会での受賞は、そのコンクール・研究発表会に参加した多くの研究の中から、他と比べて優れた研究として選ばれたということです。したがって、その時点で他より優れているとして受賞したという事実が生徒や指導した教師、その所属する学校などの誉れとなります。また、受賞したという事実が歴史に残ります。しかし、提出された論文は論文発表会・コンクールのための会議録(Proceedings)・審査資料というべきもので、原著論文(正式の学術論文)とは見なされません。したがって、発表内容が他者に引用されることも、生徒理科研究の発展に貢献することもありません。一方、査読有り論文誌への出版は、専門家の査読により論文が新規性や重要性から見て社会的に公表・記録する価値があると評価されたことを意味します。他の研究より優れているか否かではありません。そして、研究論文が社会的に価値あるものとして公表・記録されたということが、生徒や指導教師、所属学校などの誉れとなります。当然、出版論文は学術論文として生徒理科研究史に位置づけ・評価されたり、多くの人に読まれたり引用されたりして生徒理科研究の発展に貢献します。簡単にいうと、発表会・コンクールでの受賞は個人的名誉であり、論文出版は社会的貢献であるといえます。以上の違いを考慮すると、生徒理科研究の最終目標を査読有り論文誌への出版とし、研究発表会や論文コンクールでの受賞はそれにいたる途中過程であるとして、両方を目標とするのが適切です。また高校等が行う自校生徒の活躍や教育成果の紹介においても、今後は受賞記録だけでなく、査読有り論文誌への出版論文数や出版論文内容の紹介が求められるでしょう。

④生徒の理科では投稿論文は2名の査読者により査読され、その結果を編集委員が評価し、その結果に基づき編集部が最終的な出版の可否を決定するとしているが、これで論文審査の公平性は保証されるのか。

(答え)「公平性が保証されるのか」と問われれば、「保証」はないと答えざるを得ません。しかし、2名の査読委員が審査を行い、担当編集委員がレフェリー役を果たすというのは、審査の公平性と迅速さを考えると合理的な方法です。そもそも研究論文は学校の試験や大学入試問題のように正解の定まったものではありません。一般研究においては、論文査読は、研究方法や手続きと論理が一般的研究レベルに照らして合理的に行われているか、および、研究内容の新規性のレベル(インパクト)が現在の科学研究に照らしてどの程度かの判断によって行われます。このうち、研究方法と手続きと論理の合理性は比較的客観的に判断できますが、新規性のレベルは主観的な部分が大きくなります。しかも、論文誌によって求めるレベルが異なります。したがって、査読結果に不満を持つ論文著者は多いと思われます。しかし、それでも各研究誌には掲載論文のレベルについての社会的評価がインパクトファクターという形で存在します(インパクトファクターはその雑誌に出版された論文の平均被引用回数により計算されます)。生徒理科研究では、新規性は求められますが、そのレベルは問わないというのが「生徒の理科」誌の考えです。その理由は、①現在の生徒理科研究には独自の研究動向や研究史が存在せず、そもそも新規性のレベルを比較する独自の基準がない、②あえて新規性レベルを問題にすると、一般研究の新規性レベルに近いものを評価するという、生徒理科研究の独自性の否定につながりかねないからです。したがって、生徒理科研究論文の出版に求められる条件を、研究方法と手続きと論理の合理性(高校3年生程度のレベル)と新規性の存在(レベルを問題にせず)としています。しかしそれでも見解の相違は出てきます。どんな研究でも厳密な論理と確実な証拠を求めると、不十分さを完全にのぞくことが困難であるからです。したがって、査読には公平性も重要な基準となります。すなわち、他の生徒理科研究論文のレベルに比べてそん色がなければそれでよしとするという常識的判断です。(その結果、混入する間違いは他者による批判的論文によって是正されることを期待しています。)したがって、論文投稿者はこのことを理解したうえで、査読結果に合意しない場合は、異議を申し出ることができます。ここで重要なことは、論文著者と査読委員との関係は(何が正しいかを知っている)先生と(勉強中の)生徒の関係ではなく、論文査読基準と評価の公平性の上に行われる科学的論争であるということです。

論文評価の公平性の確保のためのもう一つの方法は、社会の中に論文誌が1つではなく、複数存在することです。公平に査読するとしても、論文評価にはさまざまな意見があり、これを無理やり統一すべきではありません。社会の中に論文誌が1つしかないと、その論文誌のとる評価法・考え方が権威となり科学の発展を阻害する可能性があります。科学の発展過程ではこれまでにない新しい研究方法や考え方が出現し旧来のものと競争しながら、旧来のものを駆逐したり、逆に旧来のものに押されて途絶えたり、あるいは、両者が役割分担をして共存したりすることが頻繁に起こります。このような多様で自由な動きが科学の発展をもたらします。この自由と多様性を保証するには、複数の論文誌の存在が重要な意味を持ちます。

⑤研究結果の発表は英語で行うのがよいと聞いているが、「生徒の理科」では英語の論文は受け付けないのか。

(答え)英語で書かれた論文は受付けません。ただし、論文データベースへの登録と引用のために論文表題・著者名・要旨だけは英文要旨として論文の最後に添えます。英語の論文を受け付けない理由の第1は、「生徒の理科」は論文出版を通じて日本の(正確には日本語を母語とする、あるいは日本語で科学を学ぶ)生徒間の研究交流を活発にし、生徒理科研究を発展させるために出版する論文誌だからです。効果的な研究交流は、論文の著者にとっても読者にとっても最も自由に操れる言語で行われてこそ可能だと考えます。論文で複雑な現象を記述したり緻密な論理を展開したりすることは母語でなければ困難です。また、論文内容の正確な理解や多くの情報収集は母語でこそ可能です。もちろん、現代の多くの研究論文は英語で発表されるので、生徒のみなさんが将来(大学以上のレベルでは)英語で研究交流できるようになることを期待しています。第2の理由は、英語の文章を自由に読んだり書いたりできる人は、最初から英語で科学研究をすべきで、「生徒の理科」のカバーする範囲ではないと考えるからです。英語力が十分な生徒には欧米で出版されている生徒理科研究のための英語論文誌を紹介します。生徒の理科研究所ホームページの「関連情報」のページに載せてあります。英語での交流は、研究情報の量、質ともに日本語で行うよりはるかに高いレベルで可能です。また、生徒研究から英語で行われる(大学以上の)一般研究への移行もスムーズに行えます。しかし、英語で科学論文を読み書きできるようになったからといって、かならずしも日本語でそれができるわけではありません。日本語で読み書きするにはそれなりの訓練が必要です。したがって、そのような生徒には将来日本語でも科学論文や科学的文章を読み書きできる人になってほしいと期待しています。

⑥理科塾等で理科研究を行い、研究論文を「生徒の理科」に投稿する場合、論文の責任著者は学校教師とするのか、それとも理科塾の講師とするのか。また、生徒の所属は学校とするのか、それとも理科塾とするのか。

(答え)この場合は理科塾の講師とします。理科塾等で塾講師の指導の下に研究が行われた場合はその塾講師が責任著者となります。また、著者の所属先はその研究が行われた場所、すなわち塾が所属先となります。しかし、「生徒の理科」は高校・中学生徒の研究を対象とする論文誌です。したがって、そのことを明確にするために生徒の所属先は塾と学校の両方にします。具体的な記述のしかたは「生徒の理科」2016号に載せた見本論文2016-1を参考にしてください。

⑦研究過程で大学教員にさまざまな指導援助・助言を受けたり、実験機器を使わせてもらったりした場合、責任著者はその大学教員とするのか、それとも学校教師とするのか。

(答え)生徒の所属する学校教師が責任著者になります。責任著者は日常的に生徒の理科研究を把握しその実現のためにさまざまな指導・援助を行い、論文内容に責任を持つことのできる者、すなわち学校教師あるいは塾講師がなります。研究の一部について助言・指導を行ったり実験機器や実験場所を提供したりした大学教員はその対象ではなく、謝辞で述べるだけでよいと考えます。大学教員はそもそも世界的な視野で研究を行っており、大学教員が共同著者や責任著者となる論文は、たとえ高校・中学生徒が重要な貢献をした場合でも「生徒の理科」生徒論文の対象範囲の論文ではないと考えます。

⑧一部の論文コンクールでは一年間あるいはその年に行った研究データだけを発表するという条件を課しているものがあるが、一年以上前に行った研究結果を含めることはできるのか。

(答え)一部の論文コンクールでは一年間あるいはその年に行った研究データだけを発表するという条件を課しているものがありますが、「生徒の理科」誌ではこの考え方を取りません。数年にわたって行った研究でも、先輩から継続してきた研究でもOKです。「生徒の理科」は研究成果を評価し社会的に公表・記録するための論文誌で、研究を行った生徒の個人的能力を評価し順序づけるための雑誌ではないからです。ただし、すでに他の論文誌に出版した論文に載せたデータは二重投稿の禁止に抵触するので含めることはできません。

⑨論文を発表しようとしている最中に、偶然、他者により同様の内容の論文が査読有り論文誌等に出版される場合が考えられるが、この場合、他者の研究とは全く独立して行ってきた研究であっても、「これまでの生徒理科研究を超える新規性」に該当せず、論文発表はできなくなるのか。

(答え)他者の論文出版日と自分の論文投稿日の期間の長さによります。研究内容にもよりますが、一般に他者の論文出版日より1年以上遅ければ、完全に独立に行われた研究とは見なされず新規性はないと見なされます。しかし、数か月以内なら、独立に並行して行われた研究として新規性が認められる場合があります。この場合、後に出る論文は先に出た論文を引用してこの事情を書き添えることになります。しかし、同様の内容といっても独立に行われたのなら細部には違いがあるはずです。多くのデータが重なり新規性のレベルは下がりますが、違う部分を新規性として論文発表することになります。実は、科学研究においてこのような事態はしばしば起こります。多くの研究課題(テーマ)は自分が思いついたときには、同じアイディアを他者も思いつき、独立して研究を行う場合は十分にありうることです。そのために、科学者は見えぬ競争相手に負けまいとして、研究をできるだけ早く進め、論文発表しようとします。これが研究の先陣争いです。この争いで自分の研究者としての評価や出世するか否かが決まったり、ノーベル賞をとれるか否かが決まったりするとなると十分納得のいく話です。生徒理科研究の場合でも自分が最初の発見者となるのか、2番手の追試者となるのかは大きな違いです。

⑩大学に進学した後、高校時代に行った研究を生徒の理科に投稿することはできるのか?

(答え)大学入学後に高校で行った研究を論文にすることはできます。研究のほとんどの部分が高校時代に行われており、研究指導者が高校教師等であれば「生徒の理科」誌に論文投稿できます。その際の所属は研究を行った高校等で現在の所属(大学)ではありません。(一般研究論文でも、著者の所属はその研究が行われた時の所属組織を記載します。)

⑪論文出版料はだれが払うべきなのか。また、著者が支払う場合、指導教師と生徒の間でどのように負担すべきなのか?

(答え)その論文が学校の教育研究活動の一環として行われた研究の成果報告として出版される限り、論文出版料は研究費の一部として学校等の教育研究経費から支払われるべきです。査読有り論文誌への論文出版は研究活動の最後に取り組むべき不可欠の活動で、研究成果を社会的に正式に公表・還元するためのものだからです。これがなければ、研究成果は社会のものとならず、学校・教師・生徒は研究活動を完結していないことになります。とはいえ、潤沢な経費配分を受けるSSH指定校でなければ、生徒理科研究のための教育研究経費をわずかしか準備できないのも現実です。その場合には、学校と論文著者(指導教師と生徒)が話し合ってなんとか工面するしかありません。一般に、研究計画をつくるときには、かならず論文出版料を研究経費として確保すべきです。論文出版経費のない研究計画は最初から研究成果の論文出版を予定していない、不十分な研究計画です。ちなみに、大学では論文出版に係わる経費はすべて研究経費として計上します。しかし、科学研究費等を獲得できない研究室では著者(教員・学生)が自費として出しているのが現実です。現在、日本の研究者の30%以上が科学研究費の取得なしに大学から配分される研究費(年間20~40万円)を自費で補填しながら研究に取組んでいます。そのような研究室では研究成果発表のための学会出席旅費や論文出版料を教員・学生の自費で出している場合が多くあります。これが科学技術立国をめざす(といわれる)我が国の偽らざる現実であることも知っておくべきでしょう。

⑫生徒研究発表会で他者のポスターを携帯カメラで写真撮影していて注意されたことがある。研究発表会における写真撮影には何かルールがあるのか。

(答え)現在の生徒理科研究発表会ではルールが明文化されているものはほとんどありませんが、一般研究の発表会ではルールがあります。発表者の許可を得ずに、他者の口頭発表を録音したり撮影したりしない、ポスター発表を撮影したりしないというルールです。そもそも、発表内容には著作権があり、そのコピーをとることは発表者の許可が必要です。また、新規性(Originality)の尊重という点でも、発表データの無断コピーは、他者による盗用の危険性を高めるという点で許容されません。しかし、発表者のデータや話をメモに取ったり、知った内容を他者に話したりすることは自由です。そもそも研究発表会は交流をつうじて研究の発展を図ることが目的だからです。

⑬他者の論文のコピーが問題になっているが、生徒理科研究論文においても、他者の論文引用の過程で著作権侵害となることはないのか。

(答え)いいえ、適切に引用すれば著作権侵害とはなりません。引用は論文の新規性(Originality)に関係する概念であり、一方、コピーは論文の著作権に関する概念です。これら両者は異なる概念です。新規性に関する考え方は「論文発表をめざす生徒理科研究法 第2章 研究には新規性が必要である」に詳細に説明したとおり、社会的に正式に公表されている科学著作物について、その内容を参照するときは、引用元を明らかにして新規性(Originality)を尊重することを求めるものです。一方、著作権は人間の創作物に生じる権利で(*11)、生徒研究の報告書であっても、研究発表会のポスターであっても、口頭発表であっても、一般web情報であっても、あるいは、個人的なメモ書きであっても著作権はあります。また、著作権が生じるのはその創作物が作成された時点であって、どこかに登録するとか発表するとかしなくても生じます。そして、その創作物を他者が利用するには著作者の許可が必要です。したがって、著作権は論文に何の表示がなくても生じます。しかし、その利用のし方には2種類あり、表示記号で区別されます。©ライセンスとCCライセンスの2種類です。たとえば、© All right reservedと表示があれば、すべての利用方法について権利を主張し、他者が利用するには著作権者の許可が必要です。他方、CC BY NCと表示があれば、一定の条件下(この場合は、BYは著作権者名の表示、NCは非営利)では自由使用を認めるが、それ以外の使用については著作権者の許可が必要です。現在、多くの論文誌は©ですが、「生徒の理科」誌はCCです(*12,13)。

*11 Wikipedia 著作権 https://ja.wikipedia.org/wiki/著作権/ 参照
*12生徒の理科研究所ホームページ https://seitonorika.jp/ 「生徒の理科」生徒論文投稿規定 参照
*13 Wikipedia クリエイティブ・コモンズ・ライセンス https://ja.wikipedia.org/wiki/クリエイティブ・コモンズ・ライセンス/ 参照

しかし、科学論文等では、科学的知見自身は人間の創作物ではないので、文章の「内容」、すなわち記述された「事実」や「データ」には著作権は生じません(*14)。著作権は「内容」ではなく「表現のし方」に生じます。さらに、「文章表現」やデータを示す「図・表」であっても、それが著作者の個性を表現するものではなく一般的・定式的に事実を記述するものならば、あるいは正確を期すために必要なものであれば、他者のものを自己の論文等に必要最小限そのままの形で使用しても著作権侵害にはなりません。(しかし、この場合、記述された内容には新規性があるので、他者のものを用いるときには「引用」が必要です。)結論は、論文発表・出版の場合には、新規性と著作権の内容を正しく理解し、どちらも尊重しなければなりません。

*14 Wikipedia 著作権 https://ja.wikipedia.org/wiki/著作権/ 参照

⑭「生徒の理科」は査読有り論文誌としているがそこに掲載された論文は一般研究の論文に引用してもらえるのか。

(答え)引用されることはまれだと思います。「生徒の理科」は生徒理科研究のための査読有り論文誌であって、一般研究のための査読有り論文誌ではありません。「生徒の理科」に掲載される論文は生徒理科研究レベルの論文としては科学的に信頼性のあるものです。しかし、論文掲載に必要な条件、すなわち、新規性の評価法や研究方法・データ量が一般研究とは異なります。したがって、一般研究に取り組む研究者が「生徒の理科」掲載論文を必須の科学情報として論文検索の対象とすることはありません。一般研究から見れば「生徒の理科」掲載論文はその他の一般情報と見なされ、読者(研究者)が信頼性と科学的意義を認める場合にのみ引用されるといえます。もし、生徒理科研究の中で一般研究に匹敵する研究成果を得、一般研究論文としての社会的評価を求める場合には、「生徒の理科」ではなく一般研究のための査読有り論文誌に発表しなければなりません。

この文章は、生徒の理科研究所ホームページ(https://seitonorika.jp)の「生徒理科研究法」から作成したものです。(2020年7月29日)