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2020-8h(一般記事)「生徒の理科」生徒論文投稿規定(短縮版)

Seitonorika 2020-8, 2020年7月31日掲載, Pdfダウンロード

生徒の理科研究所
〒623-0342 京都府綾部市金河内町奥地22番地, https://seitonorika.jp, uketuke@seitonorika.jp

はじめに 「生徒の理科」生徒論文投稿規定から投稿論文作成に必要な最小限の情報として、①「生徒の理科」生徒論文作成の基本事項、②論文発表に必要な新規性、③投稿論文の作成法、④図・表の作成法、の節を抜粋して作成した。生徒理科研究に必要な新規性についての詳細な説明は、「論文発表をめざす生徒理科研究法 第2章 研究には新規性が必要である」参照。投稿論文の作成法と図・表の作成法の詳細な説明は、「論文発表をめざす生徒理科研究法 第5章 研究発表:ポスターと投稿論文の作成法」参照。
類別:一般記事  分野:生徒理科研究  キーワード:投稿規定、新規性、投稿論文、図表

1.「生徒の理科」生徒論文作成の基本事項

①「生徒の理科」は、高校・中学生徒のおこなう理科研究の成果を原著論文(original paper)として出版するための査読有り自由閲覧電子論文誌です。この論文をここでは「生徒の理科」生徒論文とよびます。

②「生徒の理科」生徒論文には新規性が必要です。論文出版に最低限必要とされる新規性のレベルは、「日本語で行われる高校・中学・小学の理科教育とこれまでの生徒理科研究を超える新規性」です。また、その他の既知情報を参照した場合は、その参照情報を超える新規性を条件とします。そして、論文にはどのような範囲で調べたところ新規なのかを明確に述べることを求めます。

③論文の対象分野は高校理科系科目のすべての分野、すなわち、生物、化学、物理、地学、数学、農業、生活、工業、その他の分野の研究で、高校・中学生徒が学校教員または塾講師等の指導のもとに行った研究に関する原著論文です。当分の間は編集委員の関係で、生物、化学、物理、数学、農業分野の論文を受け付けます。

④投稿論文は未発表の論文に限ります(重複投稿の禁止)。既発表データは引用なしには論文中に含めることはできません。また、「生徒の理科」への投稿中に他の論文誌への投稿はできません。ただし、重複投稿の禁止は原著論文に関してで、会議録(各種研究発表会や論文コンクールのために提出する研究概要やポスター・論文等)には適用されません。しかし、一部の論文コンクールでは、受賞論文の外部論文誌等への投稿を禁止しているので、詳しくはコンクール主催者にお聞きください。また、投稿論文は投稿時点で公開されたものとして扱われ、その後の特許・実用新案申請が不可能となる場合があるのでご承知ください。

⑤論文は「研究倫理の遵守」の各条件を満たす必要があります。

⑥論文は「投稿論文の作成法」と「図・表の作成法」にしたがって作成します。この作成法に従わない原稿は受け付けません。

⑦「新規投稿」論文の投稿には「投稿方法」にしたがって、「添状」・「論文原稿」・「図」のファイルを編集部に送ります。「再投稿」論文および「書き直し投稿」論文の投稿には、「添状」・「論文原稿」・「図」および「査読者への回答」を編集部に送ります。

*「投稿方法」の詳細は、「生徒論文投稿規定」ページhttps://seitonorika.jp/journaltop/toko/ 参照。

⑧論文の著者は、研究を実際に行った高校・中学生徒と、その研究を日常的に指導し、内容に責任を持つことのできる研究指導者(高校・中学の教師あるいは塾講師など)です。研究指導者は論文の責任著者となり、著者全体を代表して論文内容に責任を持つとともに、編集部との連絡や論文出版料の支払いなど論文出版にかかわる一切の実務に責任を持ちます。

⑨「生徒の理科」に掲載される論文の著作権は、「CCライセンス表示・非営利 (CC BY-NC) 」にもとづいて取り扱われます。また、特許法上、論文投稿した段階で内容は公表されたものと見なされ、その後の特許申請等は不可能になるのでご注意ください。

⑩「生徒の理科」編集部に提出される著者と責任著者に関する個人情報は、生徒の理科研究所の「個人情報の取り扱いについて」に基づき厳重に取り扱われます。

⑪「生徒の理科」への論文出版には出版料の支払いが必要です。査読結果が「出版受理」となった後で支払います。出版料は「出版受理」となった論文原稿について次式で求められる額です。 論文出版料(円)=論文本文総字数 x 3(円) + 40,000(円) ただし、著者の所属する学校あるいは著者(指導教員・生徒)が公的機関から研究経費の配分を受けていない場合には、30,000円だけ特別割引します。論文出版料に関する契約の取り扱いは、特定商取引に関する法律に基づく表記(出版料)にもとづき行います。

*公的研究経費の代表的なものは以下の経費です。

科学研究費補助金(奨励研究)(日本学術振興会)
スーパーサイエンスハイスクール(文部科学省、科学技術振興機構)
中高生の科学研究実践活動推進プログラム(科学技術振興機構)
中高生の科学部活動振興プログラム(科学技術振興機構)
ジュニアドクター育成塾(科学技術振興機構)
グローバルサイエンスキャンパス(科学技術振興機構

⑫編集部と責任著者とのやり取りは原則としてすべてホームページのフォームへの入力と電子メール(コンピュータメール)により行います。携帯メールは使えないのでご承知ください。

2. 論文発表に必要な新規性

 ①「生徒の理科」生徒論文の出版には最低限のレベルとして、「日本語で行われる高校・中学・小学の理科教育とこれまでの生徒理科研究を超える新規性」が必要です。また、「その他の既知情報を参照する場合は、その参照文献を超える新規性」も必要です。そして、「論文にはどのような範囲で調べたところ新規なのかを「はじめに」とその他必要な個所で明確に述べる」ことが求められます。この条件は、生徒理科研究の特殊性を踏まえた工夫です(*1)。大学以上のレベルの一般研究においては、論文発表には全世界的・全歴史的視野での既知情報に対する新規性が暗黙の前提として求められます。しかし、生徒理科研究の場合には、全世界的・全歴史的レベルの新規性は求められません。

*1ここで述べる新規性は生徒の理科研究所の提唱する生徒理科研究に必要な新規性で、「生徒の理科」誌https://seitonorika.jp/ への論文投稿に必要とされます。

②「高校・中学・小学の理科教育を超える」とは、高校・中学・小学の理科教科書(小学5年生から高校3年生までの全理科教科書)と標準的な参考書に書かれていない内容であること、あるいは、教科書等に書かれている法則等について教科書等に書かれているもの以外の証拠・適用範囲・具体例を新たに示すことを指します。自ら使っている教科書だけでなく、所属学科・コースの違いに関係なく小学5年生から高校3年生までの全理科教科書をチェックします。標準的な参考書とは高校の授業補助教材としてよく用いられる「~図録」、「図説~」、「~総合資料」などです。

③「これまでの生徒理科研究を超える」とは、これまでに発表された生徒理科研究論文にはない内容であることです。これまでに発表された生徒理科研究論文の記録として、「生徒の理科」誌(*2)、日本学生科学賞受賞論文(読売新聞社*3)、理科研究論文集(静岡県理科教育協議会*4)、および科学の芽賞受賞論文(筑波大学*5)をチェック・参照必須情報(「生徒の理科」チェック・参照必須情報)とします(*6)。したがって、「これまでの生徒理科研究を超える」とは、上記チェック・参照必須文献にある生徒理科研究論文には書かれていない内容であること、あるいは論文に書かれている法則等について論文には書かれていない証拠・適用範囲・具体例を新たに示すことを指します。

*2 「生徒の理科」誌https://seitonorika.jp/
*3日本学生科学賞受賞論文(読売新聞社) https://event.yomiuri.co.jp/jssa/ 受賞論文のpdfファイルが「理科自由研究データベース」(御茶ノ水女子大学)http://sec-db.cf.ocha.ac.jp/ でweb公開されています。
*4理科研究論文集(静岡県理科教育協議会)https://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/science/ ronnbunshu/top.htm
*5 科学の芽賞受賞論文(筑波大学)http://www.tsukuba.ac.jp/community/kagakunome/shyo_list.html
*6 チェック・参照必須情報は、①信頼性の担保、②無料web公開、③2ページ以上の情報量を条件に選びました。先にあげた4つのうち、後者3つは残念ながら査読有り論文誌ではありませんがどれも審査を経た受賞論文集であり、長文概要(論文)が無料web公開されているのでチェック・参照必須情報とします。これまでの生徒理科研究の長文概要・論文としては、この他に全国高等学校総合文化祭自然科学部門論文集(会場配布)と、つくばScience Edge 要旨集(会場配布)、および「未来の科学者との対話」(神奈川大学)があります。しかし、これらは現在のところ無料web公開されていない、あるいは審査を経た論文ではないという理由でチェック・参照必須情報とはしません。各自が必要に応じて利用することとします。また、1ページ以内の研究発表会要旨はその短さのため参照すべき記録とはしません。ここに挙げたもののほかにチェック・参照必須情報とすべき論文誌等があれば生徒の理科研究所にご連絡ください、検討します。

④さらに、「その他の既知情報を参照する場合は、その参照情報を超える新規性」が必要です。すなわち、参照情報には書かれていない内容であること、あるいは参照情報に書かれているもの以外の証拠・適用範囲・具体例を新たに示すことが必要です。

「その他の既知情報」としては、理科教育関係団体・学会の論文誌(*7)、大学レベルの教科書・専門書、自然科学諸分野の入門書・専門書・論文誌、その他一般web情報等があります。これらは研究課題の立案や研究計画の作成に有用な情報です。しかし、これらは生徒理科研究論文ではない、日本語で書かれていない、または、無料web公開されていないという理由で、生徒理科研究のチェック・参照必須情報とはしません。各自が必要に応じて利用する「その他の既知情報」とします。なお、大学教員等(研究者)に口頭で教えてもらう時には必ず関係文献を紹介してもらい、その文献を参照情報とします。

*7 生徒の理科研究所ホームページ https://seitonorika.jp 「関連情報」参照

また、物理チャレンジ・オリンピック、化学オリンピック、生物学オリンピック、地学オリンピックのための推薦書籍(*8)もチェック・参照必須情報とはしません。高校より高いレベルの教科書情報にもとづいて研究したいと望む生徒が必要に応じて利用する「その他の既知情報」とします。これら推薦著書は、大学1~2年生レベルの教科書です。高校教科書に書かれている内容がより詳しく丁寧に説明されている場合が多くあります。

*8 生徒の理科研究所ホームページ https://seitonorika.jp 「関連情報」参照

⑤研究の新規性の説明においては、「はじめに」で、高校・中学・小学の理科教科書等とチェック・参照必須情報を調べ、自らの研究に関係する情報は必ず引用しながら、まずこれまでに何が分っていて何が分かっていないのかを明らかにし、つづいて、それら引用情報と区別しながら自らの研究の新規性、すなわち、新しく何を明らかにしようとするのかを説明します。また、チェック・参照必須情報ではない「その他の既知情報」を研究に参照・利用する場合にはその情報(論文・書籍等)を引用するとともに、その引用情報と区別しながら自らの研究の新規性をのべます。結果的に、どんな場合にも自らの研究には引用情報を超える新規性が必要です。さらに、「はじめに」とその他必要な個所で「どのような範囲で調べたところ新規なのか」を明確に述べます(*9)。

*9 新規性についてのより詳細な説明は生徒の理科ホームページ「論文発表をめざす生徒理科研究法 第2章 研究には新規性が必要である」参照。

3.投稿論文の作成法

①論文は本文と図・表に分けて作成します。本文は、Word(マイクロソフト)または相当ワープロソフトを用いて作成します。論文原稿用紙はA4判とし、段組みは1段、字の大きさは12ポイントとします(*1)。図・表については次節に記します。

*1(見本)投稿論文本文 生徒の理科ホームページ(https://seitonorika.jp/wp-content/uploads/mihontokogenkohonbun.pdf)

②論文本文の文体は、「である」調とし、常用漢字、現代仮名使いで書きます。学術用語は教科書や文部科学省学術用語集等に従います。

③論文本文は、「表題」、「著者名・生徒/その他の別・所属先・所属先住所」、「責任著者名・責任著者のメールアドレス・現在の所属先名・現在の所属先住所」、「要旨」と「分野・追加キーワード」、「はじめに」、「材料と方法」、「結果」、「考察」、「謝辞」、「役割分担」、「利益相反」、「引用文献」、「(英文)表題・著者名・要旨」、「図の説明」の順で書きます。短い論文の場合は結果と考察をいっしょにして「結果と考察」としても結構です。

④論文本文原稿の1ページ目に、表題、全著者名、生徒/その他の別、所属先、所属先住所、責任著者名、責任著者のメールアドレス、責任著者の現在の所属先名、責任著者の現在の所属先住所を書きます。

⑤「表題」は簡潔で論文の内容と結論が読者に伝わるものにします。人目を引くだけで情報量の少ないものは避けます。特定の生物を研究材料とした場合は、「表題」にその学名(属名 種名)を斜字で入れます。(例)カイコ(Bombyx mori)。

⑥「著者名」は実際に研究を行った生徒と研究指導者(学校教員または塾講師等)の名前とします。著者名は研究への貢献度の高い者から順番に並べます。最後の著者名は責任著者とします。「生徒/その他の別」は高校・中学生徒の場合は著者名の後に「∗」印を付けます。「所属先」は、その研究が行われた学校または塾等の名称とします。ただし、所属学校以外の機関(塾等)で研究を行った場合の生徒の所属先は、その機関の名称と所属学校の名称との両方とします。

⑦「責任著者」は、日常的に研究を指導し、論文内容に責任を持つことのできる研究指導者(学校教師または塾講師等)で、論文誌編集部との連絡、出版料の支払いなど論文出版にかかわる一切の実務に責任を負う者とします。責任著者名・責任著者のメールアドレス・現在の所属先・現在の所属先住所を書きます。メールアドレスは仕事(研究)用のコンピュータメールのものを書き、私的なものや携帯メールは書きません。現在、所属がない場合は責任著者名・メールアドレスを書きます。

⑧論文本文原稿の2ページ目には、要旨・分野・追加キーワードを書き、つづけて以降の本文を書きます。

⑨「要旨」は、研究目的と結果・結論を中心に論文を400字以内にまとめた文章です。論文検索でかかるように情報量の多い文章とします。「分野」は、関係する高校理科系科目名の1つを、生物、化学、物理、地学、数学、農業、生活、工業、その他の中から選んで書きます。「キーワード」には論文検索向けに論文内容を適切に表す重要語句を4個以内書きます。

⑩「はじめに」には研究理由と、研究目的と、結果・結論のまとめと、新規性のレベルを書きます。「研究理由」としては、まず論文の導入文を短く書きます。いきなり課題を提起したり、対象とする現象について模式図を使って紹介したりします。つぎに、先行研究と関連情報にもとづき研究課題についてこれまでに何がわかっており、何が分っていないのかを書きます。先行研究と関連情報は、引用元(著作者と発表年)を明らかにしながら書きます。「何が分かっていないのか」は、次に述べる「研究目的」の新規性と意義が分かるような内容になっていなければなりません。個人的な思いや関心などいわゆる個人的動機は書きません。

研究目的」としては、実験・調査方法の概略と研究目的(問い)、すなわち、この研究ではどんな方法で何を新しく明らかにするのかを書きます。ただし、複数の実験・調査を行った場合は記述を簡略化し、研究目的概要を書くこともできます。なお、「はじめに」には「問い」を書きます。「仮説」は書きません。また、研究目的は研究の応用目的のことではありません。

結果・結論のまとめ」としては、主要な結果と何を明らかにしたのかを簡潔に書きます。また、「はじめに」には「問い」を書きます。「仮説」は書きません。

新規性のレベル」としては、どのような範囲を調べたところ新規なのかを簡潔に説明し、生徒理科研究に必要な新規性レベルを超えていることを述べます。

⑪「材料と方法」には、実験材料(現象)・実験系(調査地)、実験・調査の流れ、実験装置、薬品、実験処理手順、データのとり方、統計処理・仮設検定法等を書きます。研究対象、材料、重要な薬品と装置などは特別の事情がある場合を除き、一般的名称だけではなく製品名、型番、製造会社名も書き、同分野の研究者なら追試ができるように書きます。実験・調査計画の説明に必要な場合は、模式図や作業流れ図を書くこともあります。また、一般(読者)によく知られていない実験・測定方法はその原理を模式図と文章で説明します。模式図や流れ図等は本稿の「5.図・表の作成法」にもとづいて作成します。複数の実験・調査・計算を行った場合でも主要な方法はすべてこの節にまとめて書きます。

遺伝子組み換え実験、動物実験、あるいは人を対象とする研究を含む場合は、遺伝子組換え生物等規制法、動物実験等の実施に関するガイドライン、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針、個人情報保護法を遵守していることを記します(*2)。

*2 詳しくは、生徒の理科研究所ホームページの「論文発表をめざす生徒理科研究法 第4章 実験・調査の実施と中間発表」の「2.研究倫理の遵守」参照。

独自の材料・現象の提案や実験装置の作製を目的とする研究の場合には、その材料・現象の詳細な説明や実験装置の作製過程の詳しい説明(写真・模式図・設計図を含む)はこのページではなく、結果ページに書きます。

⑫「結果」には、実験・調査・理論計算の結果と結論を書きます。また、その他のことで新規に分かったことを書くことができます。

結果」としては、実験・調査・理論計算により得た結果を、写真、表、グラフと文章で表します。まず、論文発表時に必要となる写真、表、グラフ等をすべて作成します。グラフ・表・写真・模式図は、本稿の「6.図・表の作成法」にもとづいて作成します。グラフと表はExcel(マイクロソフト)を用いて作ります。模式図はPowerPointを用いて作ります。写真(Jpegファイル)はPhotoshop(Adobe)(または無料画像処理ソフトGIMP)をもちいて必要な部分だけを切り抜いて用います。最後にこれらグラフ、表、模式図、写真をPowerPointに貼り付け、矢印や記号をつけて図とします。

結果の説明では、再現性を十分に確認し、その旨を例数を含めて論文に記載します。数値データは適切な統計的仮説検定を行い、その結果を論文に記載します。量的データの特徴を記述するときは、例えば単に「大きい」というようなあいまいな(主観的な)表現は避け、「~に比べて大きい」と比較基準を明確にしながら述べます。実験区と対照区とを比較しながら記述することにより、結果が何を意味しているのかを明らかにしながら書きます。また、一般的な方法に重要な変更を加えて独自の方法を確立した場合は、そのことを結果の中にも書き込みます。

結論」としては、結果から論理的に導かれる「結論」を書きます。このとき「結論」は、研究目的の「問い(疑問)」に対する「答え」となっていなければなりません。因果関係を実証(証明)する論理、因果関係を推測する(新しい仮説を定立する)論理、既知の因果関係(仮説)を支持する(矛盾しないことを示す)論理の違いに注意して適切な表現で書きます。ネガティブデータや「有意差なし」の解釈では、「~とはならなかった」と「~ではない(ことが分かった)」との違いに注意します。確信の程度があいまいな「考えられる」はできるだけ用いません。「~である」「~を示した・~を証明した」「たぶん~だろう」「~を示唆する」「~の可能性がある」「~かもしれない」「~を支持する・~と一致する」「~と矛盾しない」「~を否定する・~は否定される・~と矛盾する」「~の可能性は低い」など、確信の程度の明瞭な表現で書きます。

前述のように、独自の材料・現象の提案や実験装置の製作を目的とする研究の場合には、その材料・現象の詳細な説明や実験装置の作製過程の詳しい説明(写真・模式図・設計図を含む)はこの「結果」に書きます。また、物理等で一定の理論計算を行い実験結果による検証を行ったときは、理論計算や検証結果はこの結果ページに書きます。

複数の異なる実験・調査を行ったときは、「結果」の下に各実験・調査のための節を作成し、実験・調査毎に結果・結論を書きます。各節では、導入文として、まず、その実験・調査の研究目的(問い)と実験調査(材料と方法)の概略を短く述べ、つづけて結果と結論を書きます。これを実験・調査の数だけ繰り返します。

⑬「考察」には、「結果・結論のまとめ」と「新規性の学問的意義」について書きます。「結果・結論のまとめ」では、研究で明らかにした結果・結論を短くまとめます。このとき、「結論」は「はじめに」で提起した問いに対する結果にもとづく回答となっていなければなりません。

新規性の学問的意義」では、まず、結果・結論のどの点に新規性があるのかを先行研究や関連情報を引用しながら説明します。つづいて、その学問的意義、すなわちその結果・結論から導かれる(推測される)新しい考え方等について、先行研究や関連情報を引用しながら議論します(著者の考えを書きます)。この時、新規のアイディア(仮説)等を模式図を示しながら説明することもできます。また、社会的意義があればそれも書くことができます。さらに、研究の過程で明らかになったその他の新規事項についても、その新規性を説明し、その学問的意義や社会的意義を書くことができます。「今後の計画」は書きません。しかし、将来の期待される研究方向については書くことができます。

考えを述べるときは、確信の程度があいまいな「考えられる」はできるだけ用いません。「~である」「~を示した・~を証明した」「たぶん~だろう」「~を示唆する」「~の可能性がある」「~かもしれない」「~を支持する・~と一致する」「~を否定できない・~と矛盾しない」「~を否定する・~は否定される・~と矛盾する」「~の可能性は低い」など、確信の程度の明瞭な表現で書きます。

複数の実験・調査を含む場合は、まず、実験・調査全体で何を明らかにしたのかを書き、つづいて各実験・調査で明らかになった「結果・結論」を短く列記します。考察は、「結果・結論」の新規性について説明し、その学問的意義や社会的意義を書きます。

⑭「謝辞」には、研究の遂行や論文作成で協力を受けた人に対する謝辞を書きます。たとえば、研究材料の提供、実験器具の貸与、研究場所の提供、助言、情報提供、論文のチェックなどです。「研究費補助金」には、研究経費や論文出版料の支援を受けた場合はその名称を書きます。支援を受けていない場合は「研究費補助金はなし」と書きます。

⑮「役割分担」には、各著者について、「名前:役割」を書きます。役割は「研究企画」・「材料準備」・「実験実施」・「技術指導」・「データ処理」・「図表作成」・「論文作成」など簡潔な言葉で書きます。

⑯「利益相反」には、この研究課題に関して著者または著者の所属組織が営利企業または営利追求団体や個人から受けた援助・便宜について書きます。企業・団体・個人名と援助・便宜の内容を簡潔に書きます。ない場合は「利益相反はなし」と書きます。

⑰論文は、一般的に明らかなことや先行研究等で明らかにされていることはすべて「出典(引用元)」を明らかにしながら書きます。著者がこの研究で明らかにしたことあるいはあらたに提起した考え方以外の内容はすべて引用元を明らかにしなければなりません。あいまいな伝聞や引用元の不明なことがらについては科学情報としては引用できません。「出典(引用元)」は本文中に「著者名(発表年)」を記入することにより示します。ただし、著者が3名以上の場合の著者名は「第1著者名ほか」とします。著者名は姓だけを書きます。

(本文中での引用のし方)
(2名の時)――――この変化は常温では起こらない(村辻・村辻,2018)。
(3名以上の時)――――村辻ほか(2010)はこの現象を――――――

⑱インターネット上のホームページは重要な情報源です。しかし、そこから得られる情報の取り扱いには注意が必要です。インターネット上にある情報は基本的には原文献にまでさかのぼり、正式の引用を行います。査読のない紙誌に発表された報告や論文は、その信頼性には注意が必要ですが著者が重要と認めるなら引用できます。一方、著者や責任者が特定できないインターネットや紙誌の情報は信頼できる科学情報とみなすことはできません。根拠データの示されないブログ・ツイッター等の記事やホームページ情報は根拠ある科学情報としては引用できません。しかし、あいまいなインターネット情報や根拠の示されない情報を対象としてその傾向や真否を研究・調査することはできます。

⑲「引用文献」には、本文中に引用したすべての文献の文献情報を書きます。本文中に引用しなかった文献は書きません。ローマ字で表した時のABC順でリストします。文献情報の書き方は引用文献の種類により異なります。論文誌に掲載された論文の場合は、全著者名、発行年、論文の表題、掲載論文誌名、巻(号)、ページを書きます。単行本の場合は、著者名、発行年、本の表題、出版社名を書きます。編集(監修)本に掲載された論文の場合は、論文著者名、発行年、論文(章)の表題、本の表題、編集(監修)者名、出版社名、論文ページを書きます。教科書や参考書は単行本と同様に書きます。ただし、教科書は著者名の最後に出版社名も入れます。web論文誌やweb書籍の場合は、一般の論文誌や書籍と同様に書き、最後にDOI(デジタルオブジェクト識別子)(ある場合のみ)を書きます。論文コンテスト受賞論文の場合は、著者名、コンテスト実施年、論文の表題、コンテスト名、受賞名を書きます。一般のwebページの記事の場合は、記事著者名(ページ責任者・団体名)、(発行年または最終更新日)、記事表題(またはページ表題)、サイト名(~ホームページ)、ページアドレス(http://)、アクセス日時(yy/mm/dd)を書きます。具体的な書き方は、下の例や「見本論文」を参考にしてください。なお、単なる投稿サイトのweb記事や、記事著者名(ページ責任者・団体名)とサイト責任者名(団体・会社名)のないweb記事は引用することはできません。どんな引用の場合も、著者名には全員の氏名を書きます。

(「引用文献」での書き方)
論文誌に掲載された論文の場合  村辻理男・村辻秀雄(2018): あたらしい細胞観察法、生徒理科研究 4(2):16-31.
単行本の場合  村辻理男(2018): あたらしい細胞観察法,生徒の理科出版.
編集本に掲載された論文の場合  村辻理男(2016): あたらしい細胞観察法、これからの生徒理科研究、村辻理科子(編)、生徒の理科出版、56-85.
論文コンテストの受賞論文  村辻理男(2017): 新しい細胞観察法、第3回学生理科研究コンテ、優秀賞.
一般のwebページの場合  生徒の理科研究所(2016): 「生徒の理科」とは、生徒の理科研究所ホームページ、https://seitonorika.jp/journaltop/2018/07/26.

⑳「(英文)表題・著者名・要旨」は、表題・著者名・要旨の英訳です。英文に不安のある者は有料の科学論文校閲をご利用ください。

㉑「図の説明」は、図の下につける表題と説明です。図1、図2というように図に通し番号をつけ、表題と説明文を書きます。組図の場合は、さらに各図を図1A、図1B、図1Cというように分けます。さらに図が多い場合は、図1A1、図1A2、図1A3というように分けることもあります。図に入れた矢印や記号の説明は図番号と表題に続けて書きます。表の説明は、一般に表の一部として表の下に書き入れます。しかし、説明が長くなる場合は、説明部分は表とは別に「図の説明」の最後に「表の説明」として書きます。

*投稿論文作成のより詳細な説明は、生徒の理科研究所ホームページ「論文発表をめざす生徒理科研究法 第5章 ポスターと投稿論文の作成法」参照。

4.図・表の作成法

①「図・表」は、各図・表について出版論文に載せる時の大きさで作成します。図には(写真やグラフ、模式図、数式)を含みます。出版論文の用紙サイズはA4版、段組みは2段となるので、この段幅、ページ幅を考慮しながら図・表の大きさを決めます。

②図・表の合計数は、7個以下とします。図・表の数が多い時は複数のものを1つの組図にまとめ、合計数を7個以下とします。図と表を合わせて1つの組図とすることもできます。

③図・表には図番号を付けます。図番号は、図1、図2、図3、、、というように付けます。組図の場合は、さらに各図を図1A、図1B、図1Cというように分けます。さらに図が多い場合は、図1Aを図1A1、図1A2、図1A3というように分けることもあります。各図(図1、図2、、、、)の表題と説明文は、論文本文の最後の「図の説明」欄に書きます。

表も図と同じように表1、表2、、、というように番号を貼り付けます。ただし各表の表題と説明は表の上下に書き込みます。表題は表の上に書き、説明は表の下に書きます。

④グラフの作成にはExel(マイクロソフト)、写真の処理はPhotoshop(Adove)(または無料画像処理ソフトGIMP*1)、模式図の作成はPowerPoint(マイクロソフト)、表の作成はExelを用いると便利です。すべて出版論文に載せる時の大きさで作成します。写真の場合は必要の部分だけをPhotoshop(またはGIMP)で切り抜いて使います。こうして作成した原図をPowerPointの「デザイン・ページ設定・スライドサイズA4・スライド縦(19cmx27.5cm)」のページにはりつけ、複数の図を組み合わせたり、図の大きさを変更したり、矢印や記号を入れたりして最終的な図を完成します(*1)。 各図・表はべつべつのPowerPointページに作成します。図・表に入れる字・線の大きさと太さは、論文印刷時の大きさ・太さを考えて決めます。

*1 画像処理ソフトの操作手順はPhotoshopの方法で説明します。GIMPを用いるときは同等の処理をGIMP操作法に従って行います。GIMPのダウンロードと操作法はインターネットで調べます。

⑤最後にPowerPointファイルから解像度330dpiのJPEGファイルを作成します。PowerPointで保存すべきスライドを出し、「ファイル」「名前を付けて保存」を選択します。保存場所を指定した後、出てきた画面で「ファイルの種類」を「JPEGファイル交換形式(*.jpg)」とし、同画面下段の「ツール∇」をクリックし「画像の圧縮」を選択します。出てきた画面で「HD(330dpi):高解像度(HD)表示用」をチェックし「OK」をクリックします。元に戻るので「ファイル名」を入れて「保存」をクリックします。出てきた画面で「このスライドのみ」をクリックするとJPEGファイルが保存されます。このJPEGファイルをPhotoshop(またはGIMP)で開き、必要な部分だけを切り抜き、新ファイルとしてJPEGで保存します。これで330dpiの投稿用のJPEG図ファイルが完成します。なお、投稿用JPEG図ファイルにはファイルサイズ3MB以下という制限があります。3MBを超える場合はPhotoshop(またはGIMP)でサイズを小さくします。

*図・表の作成法の詳しい説明は、生徒の理科研究所ホームページ「論文発表をめざす生徒理科研究法 第5章 ポスターと投稿論文の作成法」参照。

この文章は、生徒の理科ホームページの「生徒の理科」生徒論文投稿規定から作られました。(2020年7月31日)Ver2 2020年8月30日。Ver3 2020年10月11日。
Ver4 2020年11月1日。